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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

老後の自立度をはかる指標の違い2~IADLとは~

コラム2020/04/15

老後の自立度をはかる指標の違い2~IADLとは~

老後の自立度をはかる指標の違い2~IADLとは~

前回は、ADL(日常生活動作)について、ご紹介させていただきました。ADLは、日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作、「起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容」動作のことでしたね。今回はIADLについて、ご紹介させていただきます。

IADLとは

IADLは、「Instrumental Activity of Daily Living」の略です。「Instrumental(手段的)」という単語を含むことでも分かるように、ADLよりも一段階複雑な行動を指します。

電話の応対では、誰宛てに電話がかかってきたのか、家族が不在の場合どのように対応すべきかといった認知・コミュニケーション能力が求められます。在宅介護の場合、単純なADLだけで済むことはなく、より高度な応対や判断が必須となることでしょう。高齢者一人で留守を預かるケースも出てくることでしょうし、高齢者と同居されている方はIADLの状態も把握しておくことで、心身機能の衰えを早期に察知することが可能になります。

IADLの尺度の指標

具体的な事例として、厚生労働省では以下の8項目を提示しています。
  1. 電話を使用する能力(自分で番号を調べて電話をかけるか、など)
  2. 買い物(すべての買い物を自分で行うか、など)
  3. 食事の準備(自分で献立を考え準備・給仕までするか、など)
  4. 家事(日常的な範囲のことをすべて自分で行うか、など)
  5. 洗濯(すべて自分で行うか、など)
  6. 移送の形式(自分で運転したり公的機関を利用して旅行したりするか、など)
  7. 自分の服薬管理(適正な量の薬を規定の時間に飲めるか、など)
  8. 財産取り扱い能力(銀行手続きやお金の出し入れ等、お金の管理をすべて自分で行うか、など)

なお、IADL能力の低下はADLの前段階で起こり得るもので、順番的にADLの障害がIADLの障害より早く起こることはありません。
上記の指標は、要支援および要介護の人の進行程度を窺い知るうえでの大切な手掛かりとなるため、介護の世界でIADLは重要視されています。

IADLを衰えさせないために

高齢者のIADLについて、一番深く知っているのは家族です。一緒に暮らしているからこそ、日々の微妙な変化にも気づくことができるはずです。しかし高齢者の場合、日常的に難なくできることもあれば、無理に少し背伸びをすればできることもあるため、その見極めも重要です。また一つの行動についても、その時々の体調によってできる日、できない日があることも知っておかなくてはなりません。
毎日の習慣のように繰り返している行動についてはIADLに大きな衰えが見られず、比較的長く能力を維持できます。厚生労働省が発表したIADLに関する調査研究の報告書(平成24年度)によると、「新聞(または本や雑誌)を読んでいる」「健康についての記事や番組に関心がある」と回答した高齢者は全体の80%近くにまで達しました。健康や世の中で起きている現象に興味があり、自ら知ろうとする行動は気持ちにメリハリを生みます。また自らページをめくる行為そのものも、指先を使う運動になるため認知症の予防や健康維持にもつながることでしょう。

「若い人に自分から話しかける」と回答した高齢者も70%を超えました。人とふれあい、コミュニケーションを日々続けていくことも心の活性化につながり、元気に健康で老後を迎えるために必要なことなのかもしれません。

まとめ

IADLは普段から寝食をともにしなければ把握しづらい内容であり、また正確な判定を下すことも難しいはずです。日常の何気ない変化を汲み取れるのは、やはり一緒に暮らす”家族”以外に他なりません。在宅介護を続けていくにあたり、今後の要介護度の変動や適切なケアに影響を及ぼす可能性があるだけに、日ごろから高齢家族とのコミュニケーションは大切ですね。次回は評価方法についてお話致します。