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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

高齢者の転倒にご注意を!

コラム2020/03/19

高齢者の転倒にご注意を!

高齢者の転倒にご注意を!

高齢になると筋力低下などが原因で転倒の可能性が高まることは周知のことかと思います。私たちも「明日は、初回訪問!」と準備を進めていたところに、「家の中で転倒してしまい入院することになりました。」なんてご報告が入ったことも少なくありません。高齢者の転倒は、その人らしい生活を奪ってしまう事態にまで発展しかねない非常に危険なものです。そこで今回は、高齢者の転倒についてお話をさせて頂きます。なぜ転倒するのかをご理解いただき、予防に生かして頂ければ幸いです。

高齢者の転倒・転落事故の現状

消費者庁が掲載している、厚生労働省「人口動態調査」の調査票情報及び、東京消防庁「救急搬送データ」を基にした高齢者の事故状況の分析にて、わかりやすく紹介されていたので、抜粋してご紹介させて頂きます。

◆年代別の高齢者の死亡者数についてのデータ

75歳以上になってくると、5歳ごとに数値が倍増しているのが特徴的です。当然の結果ではありますが、高齢になればなるほど転倒によるリスクは高くなっています。

◆高齢者の介護が必要となる原因

全体では4番目に多く介護が必要になった方の実に8人に1人が骨折や転倒が原因で介護を必要とする生活を送らなければならなくなっています。高齢者の転倒がいかにリスクの高いものかを物語っていますね・・・。

◆高齢者の転倒・転落事故による救急搬送車数

死に至らないまでも、年代があがるにつれて、中等度以上の割合が増えていることから、年齢があがると共に危害の程度も重くなりやすいことを如実に表しています。ちなみに、東京消防庁の調査によると、転倒の50%以上が屋内で発生しており、転倒発生場所で最も多い箇所は「居室・寝室」となっているようです。

転倒はなぜ起こるのか

加齢とともに起こる運動能力や筋力の低下も原因の一つですが、実は転倒は様々な要因が重なって起こるものであるということをまずは理解する必要があります。
私たちに置き換えてイメージしてみましょう。私たちは普通に歩いているだけではまず転ぶことはありませんね。ではスマホをみながら歩いてみましょう。これでもまだ転ぶことはないと思います。では更に、LINEの返信をしながら、且つ、目の前の信号が変わりそうで、走り出した先に思いもかけず段差があればどうでしょうか。中には段差につまづいて転んでしまう方もみえられるのではないでしょうか。
転倒の原因を考える場合には、大きく分けて二つの要因を探る必要があります。身体状況に関連した「内的要因」と生活環境に関連した「外的環境」です。ではそれぞれが何を指すのかをご説明していきます。

「内的要因」

●身体状況の変化
筋力の低下、バランス感覚の低下、視力・視野の悪化、感覚が鈍くなる

●精神的・心理的側面
焦り・不安・緊張・興奮・注意力不足

●服薬している薬の作用
現在服薬している薬の数や副作用

薬の副作用が転倒の原因になることは意外と見落としがちです。高齢になると、複数の薬を数多く飲んでいるケースも多いことや、内臓機能の低下も重なり、副作用がでやすい状態にあります。また、認知機能の衰えなどから自身の体調の変化に変化を口にしない方も多く、周囲の人間も気づきにくいことが多くなります。

「外的要因」

●履物
脱げやすい、滑りやすい

●地面の状態
段差がある、滑りやすい、でこぼこしている

●明るさ
薄暗い、陰になっていて段差が確認しずらい

●障害物
電気コード、カーペットなどの端、マット

こちらはいわゆる「環境整備」の対象となるものですね。こちらはその方の生活環境によって、無数に考えられるため、実地調査などを行う際には特に注意して観察する必要があります。

転倒を予防する・再発を防止する

まずは、その方が過去に転倒した経験があるのかどうかの確認をしてみることをおススメします。転倒した経験があるのならば、将来的な転倒を予測するためにも、どのような状況だったのかなどエピソードをしっかりと確認し、先ほどの内的要因と外的要因に分けて、要因を探っていきましょう。転倒予防・再発防止のためには、内的要因と外的要因のそれぞれに対して、対策を立てていく必要があります。
内的要因に関して言えば、筋力トレーニングやリハビリ、服薬管理などが考えられます。筋力トレーニングやリハビリに関しては、それらが直接事故につながる可能性も高いため、医師やPTの指示のもと無理なく的確に行うことが大切です。服薬の管理に関しては、医師や薬剤師に相談をすることはもちろんですが、その方が現在何を服用しているのかを正確に把握するために、お薬手帳の確認だけではなく、頓服で飲んでいる市販の薬がないかなどもご本人様やご家族に質問するようにしたいですね。
外的要因は、単純に転倒を引き起こしそうなものをなくしていくことになりますが、生活エリアの環境は日々変化するため、転倒リスクを抱えている方の場合は、特にチーム内で意識共有をし、訪問時に転倒リスクを高める可能性があるものを発見した場合には取り除いてあげるように徹底しましょう。

まとめ

今回は、高齢者の転倒についてのお話をさせて頂きました。高齢者の転倒は非常に危険が高いものであることを再認識して頂けたかと思います。先日の縟瘡のテーマの時にもお話をさせて頂きましたが、こちらもやはりチームワークが予防・再発防止につながります。ひとりひとりが意識共有をし、「今日訪問したら、〇〇が原因で転びそうになっていたよ」など、細やかな情報を共有することで、転倒の可能性を低下させることができます。この記事を読んで、本日の訪問時に普段よりも注意深く家の中の様子を観察して頂けたら幸いです。