在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/08/18
本人の意思を尊重し、受け入れ可能なタイミングで訪問診療を導入した慢性腰痛患者の事例
要点サマリー
慢性腰痛を有する80歳男性に対し、通院困難となったタイミングで本人の意思を尊重して訪問診療を導入した事例である。妻はすでに訪問診療を利用していたが、本人は自力で通院できるとの意向から当初は導入を希望していなかった。その後、腰痛や身体機能低下により通院継続が難しくなり、本人自ら訪問診療を希望したことで円滑な導入につながった。ケアマネジャーにとっては、医療的必要性だけで介入を急ぐのではなく、本人の価値観を尊重しながら関係を維持し、支援を受け入れられるタイミングを逃さないことが重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:80歳・男性
居住地:該当なし
世帯構成:夫婦のみ
キーパーソン:長女(別居)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険1割
介護保険:要介護1
診断名
・慢性腰痛
導入の背景
転居を契機に、妻が訪問診療を利用することとなった。その際、本人にも訪問診療の利用を提案したが、自分で近隣の医療機関へ通院できるとの意向が強く、導入には至らなかった。
本人は自身の考えや生活スタイルを大切にしており、新たな支援の導入には慎重な姿勢を示していた。そのため、医療・介護関係者は訪問診療の利用を繰り返し勧めるのではなく、本人の意思を尊重し、必要となった際に相談できる関係性を維持した。
その後、慢性腰痛の増悪と身体機能低下により外来通院の継続が難しくなった段階で、本人から訪問診療を利用したいとの申し出があった。この意向を受け、訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、慢性腰痛の程度や身体機能、日常生活への影響を継続的に確認しながら、疼痛管理を行った。
本人は当初、訪問診療に対して慎重な姿勢を示していたが、自ら利用を希望したタイミングで開始したこともあり、診療は円滑に受け入れられた。診療を重ねる中で医療者との信頼関係も形成され、自宅で体調や生活上の困りごとを相談できる安心感につながった。
また、妻も訪問診療を利用していたため、夫婦それぞれの健康状態や生活状況を把握しやすく、必要に応じて家族とも情報共有を行いながら、夫婦での在宅生活を支援した。
医療対応の詳細
主病
慢性腰痛
対応内容
・慢性腰痛の継続的な経過観察
・疼痛の程度と日常生活への影響の評価
・身体機能および活動状況の確認
・疼痛コントロール
・妻を含めた夫婦の生活状況の把握
・本人および家族への病状説明
・本人の意向に配慮した継続的な在宅支援
医療処置
該当なし
支援のポイント
・訪問診療を希望しない理由を確認し、本人の自立心や価値観を尊重する
・医療的必要性があっても、本人の受け入れが得られない段階では無理に導入を進めない
・支援を断られた後も関係を切らず、必要時に相談できる状態を維持する
・通院能力や身体機能の変化を継続的に確認し、本人の意向が変化するタイミングを捉える
・本人から支援希望が示された際には速やかに導入へつなげる
・夫婦双方が訪問診療を利用する場合は、世帯全体の生活状況も踏まえて支援する
考察
本症例は、訪問診療の必要性があっても、本人が受け入れられるタイミングと一致しなければ導入につながらないことを示した事例である。
外来通院を続けたいという本人の意向には、自立した生活を維持したいという思いや、それまでの生活スタイルを変えたくないという価値観が含まれている場合がある。そのため、支援者側が必要性のみを根拠に訪問診療を勧め続けることで、かえって支援への抵抗を強める可能性もある。
本症例では、当初の拒否を受け止めながら関係性を維持したことで、通院が困難となった段階で本人自ら支援を求めることができた。ケアマネジャーにとっては、「今は利用しない」という本人の意思も尊重しつつ、状況が変化した際にすぐ支援へつなげられる関係を保つことが重要である。
付記情報
・診療科:内科、整形外科
・病態・症状:その他
・世帯構成:夫婦のみ