在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/06/09
慢性心不全とCOPDを併存する高齢男性に対し、急変前介入体制の構築により在宅療養継続を支えた訪問診療導入事例
要点サマリー
慢性心不全、慢性閉塞性肺疾患、心房細動を有し、夜間から早朝の呼吸苦により救急搬送を繰り返していた高齢男性に対し、訪問診療を導入した事例である。病状そのものに加え、体調変化時の相談先がないことが在宅生活継続の大きな不安要因となっていた。在宅医療では定期的な状態確認と、浮腫、体重増加、SpO2低下、食欲低下などの軽度変化に対する早期介入体制を整備した。ケアマネジャーにとっては、疾患管理のみでなく、家族が迷わず相談できる具体的な連絡基準を設定し、急変前に介入できる支援導線を作ることが重要となる症例である。
基本情報
年齢・性別:87歳・男性
居住地:名古屋市緑区
世帯構成:夫婦のみ
キーパーソン:妻(同居)
保険・福祉情報
医療保険:医療保険利用
介護保険:要介護3
診断名
・慢性心不全
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
・心房細動
導入の背景
妻と二人暮らしの高齢夫婦世帯で生活していた。本人は慢性心不全とCOPDを抱えており、以前から息切れや下肢浮腫を繰り返していた。特に夜間から早朝にかけて呼吸苦を訴えることが多く、そのたびに妻は救急車を呼ぶべきか、このまま様子を見てよいのか判断に悩んでいた。
実際、この1年間で救急搬送は4回あり、搬送後に数日の入院となることもあれば、そのまま帰宅となることもあったため、妻は次第に判断に自信を失っていた。ケアマネジャー訪問時には、毎晩眠るのが怖いと話す場面もみられた。本人も、苦しい時に病院へ行くしかない生活はもう疲れたと話していた。
このため、病状管理に加えて、体調変化時に早期相談と介入ができる体制を整える必要があると判断され、訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、慢性心不全およびCOPDの状態を定期的に確認しながら、急変前の小さな変化を捉える支援体制を整えた。訪問看護と連携し、体重増加、浮腫増悪、食欲低下、SpO2低下、夜間呼吸苦などを継続的にモニタリングした。
特に、いつ連絡するべきかを明確化するため、体重2kg増加、会話時息切れ増悪、食事量半分以下など、具体的な連絡基準を設定した。これにより、軽度の浮腫や呼吸状態悪化の段階で薬剤調整できる場面が増え、重症化予防につながった。
また、妻に対しては、迷ったら相談してよいという関係づくりを重視し、判断を一人で抱え込まなくてよいことを繰り返し共有した。その結果、救急搬送回数は大幅に減少し、本人、家族ともに在宅療養への安心感が高まった。
医療対応の詳細
主病
慢性心不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心房細動
対応内容
・慢性心不全の体液管理および全身状態評価
・COPDに伴う呼吸状態の継続的観察
・体重増加、浮腫、食欲低下、SpO2低下への早期対応
・呼吸苦悪化時の薬剤調整
・訪問看護との連携による状態モニタリング
・急変時相談体制および連絡基準の整理
医療処置
該当なし
支援のポイント
・慢性心不全とCOPDでは、救急搬送後対応だけでなく急変前介入体制を整える
・家族が迷わず相談できるよう、連絡すべき状態を具体的に数値や症状で共有する
・体重増加、浮腫、食欲低下、SpO2低下などの小さな変化を見逃さない
・訪問看護と連携し、症状変化を継続的に把握する
・妻の精神的負担軽減を支援目標に含め、判断を一人で抱え込ませない
・本人にとっても、悪化してから受診するのではなく悪くなる前に相談できる体制を整える
考察
本症例は、慢性心不全とCOPDを併存する高齢者において、病状そのものだけでなく、体調変化時の相談先がないことが在宅療養継続を難しくしていた事例である。夜間から早朝の呼吸苦は家族に強い不安を与えやすく、判断基準が曖昧なままでは救急要請が増えやすい。
訪問診療を導入し、急変前の小さな変化に対して早期介入できる体制と、具体的な連絡基準を整えたことで、救急搬送の減少と家族の不安軽減につながった。ケアマネジャーにとっては、慢性疾患管理では状態悪化後の対応だけでなく、悪化させないための支援導線と、家族が相談しやすい関係性を作ることが重要である。
付記情報
・診療科:内科
・病態・症状:心不全、COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・世帯構成:夫婦のみ