コラム2026/03/31
沈黙の臓器を理解する ~肝臓・胆のう・膵臓のしくみと高齢者ケアの視点~
食事量が落ちている、皮膚が黄色っぽい、血糖値が安定しない、なんとなく全身倦怠感がある――。
こうした変化の背景に関わっているのが、肝臓・胆のう・膵臓です。
これらの臓器は、単に消化を助けるだけではありません。代謝、解毒、血糖調整、栄養の貯蔵、免疫機能など、生命維持に直結する役割を担っています。
特に肝臓は、異常があっても症状が出にくいことから“沈黙の臓器”と呼ばれています。高齢者では不調の訴えが曖昧なことも多く、発見が遅れやすい点に注意が必要です。

1.肝臓 ― 人体最大の「化学工場」
肝臓は、胆汁の生成、栄養の代謝・貯蔵、解毒、血液凝固因子の産生、免疫機能など、多くの重要な役割を担っています。
高齢者では、以下のような変化に注意が必要です。
・全身倦怠感
・食欲低下
・黄疸
・浮腫
・皮下出血
・意識変容
「元気がない」「ぼんやりしている」といった曖昧な変化が、肝機能低下のサインである場合もあります。多剤併用による薬剤性肝障害にも注意が必要です。
2.胆のう ― 胆汁をためる調整役
胆のうは、肝臓で作られた胆汁を一時的に貯蔵・濃縮する臓器です。胆汁は脂肪を乳化し、脂溶性ビタミンの吸収を助けます。
高齢者で注意したい代表的な疾患が胆石症です。
主な症状は、
・右上腹部痛
・背部痛
・発熱
・黄疸
ただし高齢者では痛みが目立たず、発熱や食欲低下のみで始まることもあります。
3.膵臓 ― 消化と血糖を支える臓器
膵臓には、消化酵素を分泌する「外分泌機能」と、インスリンなどを分泌する「内分泌機能」があります。
膵機能が低下すると、脂肪便、体重減少、低栄養、血糖変動などがみられます。
高齢者で注意すべきのは、急性膵炎や膵がんです。
体重減少、食欲低下、背部痛、黄疸に加え、「血糖値が急に悪化した」といった変化も見逃せません。
4.介護・医療職が押さえたい実践ポイント
・栄養状態の変化に敏感になる
・皮膚や眼球の色を観察する
・便の性状を確認する
・血糖変動の背景を考える
・医師、看護師、管理栄養士などと情報共有する
まとめ
「なんとなく元気がない」「食事量が落ちている」「血糖が不安定」――。
こうした小さな変化こそが、内臓機能低下の初期サインかもしれません。
日常ケアの中での観察力が、高齢者の重症化予防につながります。