在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/02/25
独居高齢者において、介護者負担の限界を契機に訪問診療を導入した事例
要点サマリー
高血圧や認知症、不安症を背景に独居生活を継続していた症例である。身体機能は歩行器使用で保たれていたが、不安症の悪化と介護者負担の増大が顕著となった。通院介助の限界を契機に訪問診療を導入し、医療的な定期介入による安心感の確保と、介護者の生活破綻を防ぐ支援体制を構築したケースである。
基本情報
91歳、女性。名古屋市東区在住。独居で生活している。主介護者は甥の孫である。
保険・福祉情報
後期高齢者医療保険1割負担。福祉給付金資格者証あり。介護保険は要介護3である。
診断名
高血圧症
高脂血症
骨粗しょう症
認知症
間質性肺炎
不安症
導入の背景
独居での生活を継続していたが、不安症の悪化がみられ、精神的な不安定さが日常生活に影響を及ぼしていた。歩行は歩行器使用で可能であり、排泄は日中はトイレ、夜間はポータブルトイレを使用していた。入浴は訪問看護師による介助、ヘルパーは毎日介入し、配食サービスも利用するなど介護サービスは充実していた。一方で、主介護者である甥の孫は介護のために早期退職を検討せざるを得ない状況となり、その妻も精神的負荷により入院が必要となるなど、介護者世帯の生活に大きな支障が生じていた。
介入内容と経過
通院介助の負担軽減と、日常的な体調管理および不安軽減を目的として訪問診療を導入した。既存の訪問看護・ヘルパー・配食サービスと連携しながら、医療的視点での定期的な関与を開始し、在宅生活の安定化を図った。
医療対応の詳細
定期的な診察による全身状態および精神状態の評価。
内服状況の確認および調整。
特別な医療処置:該当なし。
支援のポイント
本人の身体機能が比較的保たれていても、不安症や認知症により医療的な「見守り」が必要となるケースであった。訪問診療を導入することで、本人の安心感を高めると同時に、介護者の通院介助負担を軽減し、介護者世帯の生活破綻を防ぐ支援体制を構築した点が重要である。
考察
独居高齢者においては、身体機能だけでなく精神面の不安定さが在宅生活継続の大きな阻害要因となる。本症例では、医療介入そのものよりも「医師が定期的に関与している」という体制が、本人と介護者双方の安心につながった。介護者負担が限界に達する前段階で訪問診療を導入することの重要性を示す事例である。
付記情報
・診療科:内科、精神科
・病態・症状:認知症、間質性肺炎、その他
・世帯構成:独居