在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/02/25
認知症により通院介助が困難となった高齢女性に対し、家族の就労状況を踏まえて訪問診療を導入した事例
要点サマリー
アルツハイマー型認知症により日常生活全般に声掛けと指示を要する状態となり、主介護者である長男の就労・出張負担から通院継続が困難となった症例である。訪問診療を導入するにあたり、鍵管理や緊急時対応といった在宅特有の課題を整理し、家族・デイサービスと連携した柔軟な診療体制を構築した。
基本情報
85歳、女性。名古屋市千種区在住。長男と二人暮らし。主介護者は長男である。
保険・福祉情報
後期高齢者医療保険1割負担。介護保険は要介護3。
診断名
アルツハイマー型認知症
導入の背景
主介護者である長男は仕事が多忙で出張が多く、平日はデイサービスを利用し、出張時には独居を避けるためお泊りサービスを併用して生活していた。本人は日常生活動作すべてに声掛けや指示が必要であり、独りでいる時間は無為に過ごしてしまう状態であった。これまで家族が通院介助を行ってきたが、その継続が困難となり、あわせて緊急時に対応できる医療体制を整える必要性から訪問診療の導入を希望された。
介入内容と経過
訪問診療導入にあたり、短期記憶障害が強く、介護サービス提供者を認識できない点から、鍵管理や不在時対応が課題となった。定期診察は主介護者が比較的休みを取りやすい土曜日に設定し、出張等で対応困難な場合は診察を見送る、もしくは往診で対応する方針とした。緊急時については、デイサービス利用中に医療介入が必要と判断された場合、まず家族へ連絡し、必要に応じて自宅へ送迎のうえ診察を行う体制を整えた。
医療対応の詳細
認知機能および全身状態の定期的な医学的評価。
内服状況の確認と継続的な経過観察。
医療処置:該当なし。
支援のポイント
主介護者の就労状況を踏まえ、定期診察日や緊急時対応を柔軟に設計した点が重要であった。鍵管理が困難な症例に対し、家族・デイサービスと連携することで在宅診療を成立させたことは、同様の認知症独居・準独居ケースへの参考となる。
考察
認知症が進行した症例では、医療的必要性だけでなく、家族の就労状況や生活リズムを考慮した診療設計が不可欠である。本症例では、訪問診療を導入することで通院介助の負担軽減と緊急時対応の安心感を両立することができた。訪問診療は、単なる通院代替ではなく、生活全体を支える医療として機能している。
付記情報
・診療科:内科
・病態・症状:認知症
・世帯構成:親子