在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/02/12
居住環境による通院困難と呼吸苦の進行を背景に、外来フォローから訪問診療へ移行した事例
要点サマリー
間質性肺炎の慢性経過の中で、症状進行と居住環境(エレベーターなし)が重なり、通院そのものが大きな身体的負担となった症例である。
夫による代行受診が増え、実質的に医師による直接診察の機会が減少していたことから、ケアマネジャーの提案を契機に訪問診療へ移行した。
疾患特性と生活環境を踏まえ、外来医療から在宅医療へ切り替える適切なタイミングでの導入例である。
基本情報
年齢・性別:80歳・女性
居住エリア:名古屋市千種区
家族構成:本人・夫の二人暮らし
医療保険・介護保険情報
後期高齢者医療保険:1割負担
丸福:あり
身体障害者手帳:あり(3級)
要介護5
主病
間質性肺炎
導入の背景
本人は約6年前に間質性肺炎と診断され、以降、基幹病院での定期検査と近隣のかかりつけ医によるフォローを継続していた。
通院時は一貫して夫が付き添い、介助を行っていた。
しかし、相談を受けた約1年前から呼吸器症状が徐々に悪化し、労作時の呼吸苦が顕著となってきた。
生活・居住環境の影響
居住しているマンションにはエレベーターがなく、通院のためには階段昇降が必須であった。
この構造的要因により、外出そのものが強い労作負担となり、通院時に呼吸苦を誘発しやすい状況であった。
その結果、本人の外出頻度は低下し、夫のみがかかりつけ医へ出向いて処方薬を受け取るケースが増加していた。
介入までの経過
本人が直接医師の診察を受ける機会が減っている状況を踏まえ、担当ケアマネジャーより本人・夫へ訪問診療の提案がなされた。
本人・夫ともに「可能であれば訪問診療を利用したい」との意向を示され、当院へ相談が入った。
その後、夫より従来の主治医へ訪問診療導入について相談が行われ、了承が得られたため、翌週より当院での訪問診療介入が開始された。
医療対応の方向性
・間質性肺炎の在宅での病状評価
・労作時呼吸苦のモニタリングと症状緩和
・通院に伴う身体的負担の軽減
・主介護者(夫)の介護負担軽減
支援のポイント
居住環境(階段昇降)が医療アクセスを阻害していた点
症状進行により「通院は可能だが極めて負担が大きい」段階での介入
夫による代行受診が増え、直接診察の機会が減少していた状況
ケアマネ提案 → 主治医了承 → スムーズな在宅移行
考察
本症例は、疾患の重症度そのものだけでなく、居住環境が通院可否を左右する典型例である。
間質性肺炎のように労作負荷が症状に直結する疾患では、通院という行為自体がリスクとなり得る。
「通院が完全に不可能になる前」の段階で訪問診療へ切り替えることで、
・医療の質を維持
・患者の苦痛を軽減
・家族の負担を軽減
することが可能であり、在宅医療導入の好例といえる。
付記情報
世帯構成:夫婦二人暮らし
生活上の制約:エレベーターなし集合住宅
支援背景:要介護5、身体障害者手帳あり