在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/02/12
生活環境の破綻と通院困難を背景に、福祉・医療連携の中で訪問診療導入に至った事例
要点サマリー
独居・身寄り希薄・生活保護受給という社会的背景のもと、熱中症による入院を契機に生活環境の破綻が顕在化した症例である。
身体機能低下と認知機能低下が進行し、通院継続が困難となったことから、福祉(保護係)主導で訪問診療導入が検討された。
医療ニーズと同時に、生活・環境・社会的支援の再構築が求められる典型的な在宅医療導入事例である。
基本情報
年齢・性別:69歳・男性
居住地:名古屋市中区
家族構成:独居(未婚・子なし)
家族関係:兄弟は九州在住だが疎遠
保険・福祉情報
生活保護受給
介護保険:事業対象者 → 介護認定申請中
診断名
認知症
糖尿病疑い
導入の背景
理容師として就労していたが、約2年前に退職して以降、生活の安定性が徐々に低下していた。
7月に屋外で倒れ、熱中症のためばんたね病院へ入院。
退院後、自宅内の整理整頓が困難となり、食事後に軟便・便失禁が頻回にみられるようになり、居住環境が著しく悪化していた。
紙パンツを着用して生活しており、介護保険上は事業対象者となり、現在は要介護認定を申請中である。
生活・機能面の状況
会話は比較的しっかりしており、物静かな性格。
一方で、歩行機能は低下傾向にあり、杖を購入する経済的余裕がなく、傘を杖代わりに使用している。
ガスが停止している状態であり、生活インフラ面でも支援が必要な状況であった。
介入までの経過
歩行困難が進行し、外来通院が困難となったことから、生活保護担当の保護係より訪問診療の導入が勧められた。
医療的なフォローに加え、在宅での状態把握と多職種連携による支援が必要と判断され、当院への相談に至った。
医療対応の方向性
主病:認知症、糖尿病疑い
医療対応:全身状態評価、慢性疾患スクリーニング、通院代替としての在宅診療
連携:保護係・ケアマネジャー・介護認定手続きとの並行支援
支援のポイント
独居・身寄り希薄な生活保護受給者への医療的関与
通院困難を契機とした在宅医療導入
医療だけでなく生活環境・社会資源を含めた支援設計
「病状悪化」ではなく「生活が回らなくなった段階」での介入
考察
本症例は、医療ニーズよりも先に生活基盤が崩れ、その結果として医療アクセスが断たれるケースを示している。
会話が成立していても、判断力・生活管理能力が低下している場合、在宅医療が果たす役割は大きい。
訪問診療は単なる医療提供にとどまらず、
福祉・介護・生活支援と医療を接続するハブとして機能することが求められることを示す事例である。
付記情報
世帯構成:独居
生活状況:生活保護受給、ライフライン制限あり
支援主体:保護係・介護保険申請中