在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/02/12
身体機能低下を契機に、通院困難と家族介助負担を背景として訪問診療へ移行した事例
要点サマリー
加齢および脳血管疾患を背景に身体機能が急激に低下し、一時は自力での移動が困難となった症例である。
検査上は新規の急性疾患は認められず、通院継続による管理が現実的ではないと判断された。
本人のADLは一定程度回復したものの、通院介助の負担が大きく、在宅での医療管理体制構築を目的に訪問診療が導入された。
「急性期を脱した後の通院困難」という在宅移行の典型的な判断場面を示す事例である。
基本情報
年齢・性別:85歳・男性
居住地:名古屋市北区
家族構成:本人・妻の二人暮らし
保険・福祉情報
後期高齢者医療保険(1割負担)
介護保険:要介護2
診断名
高血圧症
脳梗塞
心房細動
導入の背景
これまでは歩行器を使用すれば屋内移動が可能であり、排泄や入浴などの日常生活動作も自立して行えていた。
しかし、1か月ほど前から身体に力が入らず動けなくなる状態となり、急激な身体能力低下がみられた。
近隣の基幹病院を受診し精査を行ったが、既存の脳梗塞所見はあるものの新たな異常は認められず、加齢による体調減退との診断であった。
その後、ADLはやや回復し、自宅内では歩行器での移動が再び可能となったが、通院となると身体的負担が大きく、現実的ではない状況であった。
介入内容と経過
ケアマネジャーより、本人および妻に対して訪問診療の選択肢が提案された。
妻からも「通院介助が大変である」との意向があり、在宅での医療管理へ切り替える方針となった。
正式に当院へ訪問診療の依頼があり、定期的な状態確認と慢性疾患管理を目的として介入を開始した。
医療対応の詳細
主病:高血圧症、脳梗塞、心房細動
医療対応:慢性疾患管理、全身状態の定期評価、通院代替としての在宅診療
緊急時対応:必要時は基幹病院と連携
支援のポイント
急激な身体機能低下後の生活再建支援
通院介助が困難となった家族負担への配慮
慢性疾患を在宅で安定して管理する体制構築
「通院可能か否か」ではなく「継続可能か否か」という視点での判断
考察
本症例は、急性期疾患が否定された後でも、通院継続が困難となる高齢者は少なくないことを示している。
ADLが一部回復しても、外出・移動・付き添いといった要素は家族介助に強く依存するため、在宅医療への切り替え判断が重要となる。
訪問診療は、終末期や重症例に限らず、**「生活として通院が成り立たなくなった段階」**で導入される医療形態であることを再確認できる事例である。
付記情報
診療科:内科
病態・症状:慢性疾患・身体機能低下
世帯構成:夫婦のみ