在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/01/27
大腿骨頸部骨折後、精神疾患と家族介護力の制約から通院継続が困難となり訪問診療を導入した事例
要点サマリー
大腿骨頸部骨折後の身体機能低下に加え、統合失調症によるサービス拒否傾向が強く、退院後の通院・服薬管理の継続が困難と判断された症例である。
同居家族はいるものの、主介護者への負担集中と受診同行の限界が想定されたため、在宅での医療介入を前提に訪問診療を導入した。
ケアマネにとっては、「家族が同居している=受診可能」ではなく、実質的な介護力と拒否傾向を踏まえた判断の重要性を示す事例である。
基本情報
年齢・性別:81歳・女性
居住地:名古屋市守山区
家族構成:本人・夫・長男・長男の妻の4人暮らし。キーパーソンは長男。
保険・福祉情報
後期高齢者医療保険(1割負担)
介護保険:要介護3
診断名
左大腿骨頸部骨折
統合失調症
導入の背景
相談時はリハビリ病院に入院中であり、退院後は通所リハビリの体験利用を予定していた。
しかし、本人は元来サービス利用に対する拒否が強く、長男も継続利用は難しいだろうと考えていた。
同居している夫にも物忘れが顕著にみられ、介護保険申請中であったため、実質的な介護力としては期待しづらい状況であった。
そのため、退院後の内服管理や食事管理など、家族の関与が不可欠な場面が多く想定されていた。
加えて、今後の外来受診に長男が継続して同行できるのかという点についても強い不安があり、通院を前提としない医療体制が必要と判断された。
介入内容と経過
退院後の生活を見据え、通院に依存しない医療体制として訪問診療を開始した。
在宅での全身状態の確認、服薬状況の把握を中心に、家族と連携しながら経過観察を行っている。
医療介入を在宅に組み込むことで、家族の受診同行負担を軽減し、生活リズムを大きく崩さず療養を継続できる体制を整えた。
医療対応の詳細
主病:左大腿骨頸部骨折、統合失調症
医療対応:内科的全身管理、内服管理のフォロー
通院:原則行わず、訪問診療による定期フォローを実施
支援のポイント
サービス拒否傾向を前提とした現実的な医療導線の設計
主介護者である長男への負担集中を防ぐための医療介入
同居家族がいても「介護力が十分とは限らない」状況の整理
退院後の生活不安を医療面から先回りして支える体制構築
考察
本症例は、同居家族が複数いる場合でも、精神疾患や家族の機能低下により通院継続が現実的でないケースが存在することを示している。
訪問診療を導入することで、「受診できるかどうか」という不安を医療側が引き取り、家族は生活支援に集中できる環境を整えることができた。
退院支援の段階で医療と介護の役割分担を明確にすることの重要性を示唆する事例である。
付記情報
診療科:内科、精神科
病態・症状:精神疾患、その他
世帯構成:親子