在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/01/27
大腸がん終末期において「在宅生活の継続」を最優先に支援した訪問診療導入事例
要点サマリー
本症例は、大腸がん終末期の患者に対し、抗がん剤治療を行わず、在宅での生活継続を主目的として訪問診療を導入した事例である。
通院負担を回避し、生活の質を保ちながら自宅で過ごす期間を最大化することを重視し、最終段階では在宅から医療機関入院への移行も選択肢として整理した点が特徴である。
ケアマネにとっては、「在宅継続」と「最終的な看取りの場」を分けて考える支援設計の重要性を示す症例である。
基本情報
年齢・性別:73歳・男性
居住地:名古屋市千種区
家族構成:本人と妻の二人暮らし。長男・長女は別居。
保険・福祉情報
後期高齢者医療保険(1割負担)
介護保険:要介護2(1割負担)
診断名
・大腸がん末期
・上行結腸癌による腸閉塞(腹腔鏡下右半結腸切除術後)
・慢性腎不全
導入の背景
上行結腸癌による腸閉塞に対して手術を受けた後、病理診断により進行大腸がんと判断された。
術後の抗がん剤治療については、ご本人・ご家族ともに希望されず、治療よりも生活を優先する方針が確認された。
今後の予後が限られる中で、「一日でも長く自宅で生活したい」というご本人の意思が明確であったことから、通院を終了し在宅医療へ切り替える方向で調整が行われた。
介入内容と経過
基幹病院への通院を中止し、訪問診療へ完全移行した。
退院前カンファレンスが実施されていなかったため、初期段階では自宅にてご本人・妻と面談を行い、今後の療養方針や急変時対応について改めて確認を行った。
在宅生活を軸としつつも、病状進行時の選択肢として、在宅看取りだけでなく、近隣医療機関への入院も含めた複線的な方針整理を行った。
医療対応の詳細
主病:大腸がん末期、慢性腎不全
医療対応:症状緩和を中心とした内科的管理
通院:中止し、訪問診療へ完全移行
支援のポイント
・「治療をしない=何もしない」ではなく、生活を支える医療として訪問診療を位置づけた
・在宅生活の継続を最優先としつつ、最終的な看取りの場については早期に希望を共有
・退院前整理が不十分なケースでも、在宅初期に方針確認を丁寧に行うことで支援の軸を明確化
考察
本症例では、抗がん剤治療を選択しないという決断が、結果的に在宅生活の質を高める方向に作用した。
特に、「最期は在宅に限らない」という妻の意向を早期に共有し、在宅と入院を対立概念として扱わなかった点は、支援者側の判断を軽くし、結果的に安定した支援につながったと考えられる。
在宅医療は看取りの場を固定するものではなく、生活の時間を支える選択肢であることを示す症例である。
付記情報
・診療科:内科、緩和ケア科
・病態・症状:がん、慢性腎不全
・世帯構成:夫婦のみ