在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/01/27
化学療法終了後、症状が比較的安定している段階から在宅BSCへ移行した膵癌末期の事例
要点サマリー
膵癌末期・多発肝転移に対し化学療法が終了し、BSC方針となった段階で在宅療養を選択した症例。疼痛は軽度で内服により良好にコントロールされており、在宅での生活継続が現実的と判断された。今後の腹水増悪を見据え、在宅での腹水穿刺も選択肢として含めた導入設計を行った点が特徴である。
基本情報
年齢・性別:85歳・男性
居住エリア:名古屋市千種区
家族構成:本人・妻同居
長男:天白区在住
次男・長女:他県在住
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
介護保険:要介護5(2割負担)
診断名
・膵癌末期
・多発肝転移
・腹水
導入の背景
食欲不振を契機に基幹病院を受診し、膵癌および多発肝転移と診断された。
化学療法としてGEM療法を複数クール施行したが病勢進行(PD)を認め、その後TS-1療法へ変更するも同様に効果は乏しく、肝転移の増大と腹水貯留が進行した。
これらの経過から、積極的治療は行わずBSC方針となった。
介入内容と経過
疼痛はほとんど認めず、アセトアミノフェン内服にて良好にコントロールされていた。
主治医より家族へ予後について説明が行われ、キーパーソンである長男を中心に今後の療養方針が検討された。
本人・家族ともに「可能な限り自宅で過ごしたい」という希望が明確であり、在宅療養への移行を前提に当院紹介となった。
医療対応の詳細
・疼痛管理:非オピオイド鎮痛薬にて安定
・腹水対応:利尿剤によるコントロールを基本とし、効果不十分な場合は在宅での腹水穿刺も検討
・通院負担を避け、在宅での症状緩和と経過観察を重視
支援のポイント
・症状が比較的落ち着いている段階での在宅移行
・遠方家族がいる中で、キーパーソン(長男)を明確化
・腹水増悪という「今後起こり得る事態」を想定した事前設計
・在宅で対応可能な医療内容を整理したうえで退院調整
考察
本症例は、がん終末期であっても疼痛や症状が比較的安定している場合には、早期から在宅療養へ移行することで生活の質を保てることを示している。
腹水という変動要素に対しても、在宅での穿刺対応を含めて計画することで、「悪化=再入院」という構図を避ける選択肢を持つことができた。
ケアマネにとっては、
・症状の重さではなく「在宅で何が起こり得るか」
・その際に誰が意思決定を担うか
を事前に整理する重要性が示唆される事例である。
付記情報
・診療科:内科、緩和ケア科
・病態・症状:がん
・世帯構成:夫婦のみ