在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/01/27
通院不安定・独居・対人特性を踏まえ、キーパーソンを起点に訪問診療を導入した事例
要点サマリー
通院の不安定さとADL低下により慢性疾患管理が困難となっていた独居男性に対し、キーパーソンである姪を窓口として訪問診療を導入した症例。本人の性格特性(対人の好き嫌い、煩雑さへの拒否)を事前に共有し、関係構築のリスクを下げたことが円滑な導入につながった。ケアマネにとっては「医療内容」だけでなく「誰を起点に動かすか」の設計が重要であることを示す事例である。
基本情報
年齢・性別:76歳・男性
居住エリア:名古屋市昭和区
家族構成:本人独居
キーパーソン:姪
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
介護保険:申請中
診断名
・糖尿病
・前立腺がん
導入の背景
近隣のクリニックをかかりつけ医としていたが、定期的な通院ができておらず、受診と未受診を繰り返す不安定な通院状況であった。
ADLの低下により、さらに通院が困難となり、糖尿病管理の継続性にも懸念が生じていた。
この状況を受け、ケアマネージャーより「通院よりも訪問診療のほうが適しているのではないか」と本人へ提案がなされ、本人も同意された。
介入内容と経過
本人は「面倒なことを嫌う」「対人関係に好き嫌いが激しい」といった性格特性があり、ケアマネージャーは訪問診療導入時の関係構築を懸念していた。
そのため、本人のキャラクターについて事前に当院相談員へ情報共有が行われた。
ケアマネージャーと相談員で協議した結果、
・本人への直接的な手続き負担を減らす
・対人トラブルのリスクを下げる
という目的から、キーパーソンである姪を窓口として導入手続きを進める方針とした。
医療対応の詳細
主病:糖尿病、前立腺がん
対応方針:
・通院不要な形での慢性疾患管理
・本人の負担感を最小限にした診療導線
・必要時に姪を介した意思確認・調整
かかりつけ医への連絡や情報共有も姪を通じて行うことで、混乱なくスムーズに引き継ぎが完了した。
支援のポイント
・本人の性格特性を「問題」とせず、事前情報として医療側と共有
・本人を無理に前面に出さず、キーパーソンを起点に調整
・医療導入の是非ではなく「導入のやり方」を工夫
・独居でも“実質的な支援軸”を明確にすることで介入が成立
考察
本症例は、訪問診療導入において「病状」よりも「人となり」が成否を分けるケースである。
独居かつ対人関係に癖がある場合、本人への直接的な説明や手続きを重ねることが、かえって拒否やトラブルにつながることがある。
ケアマネが早期にリスクを言語化し、キーパーソンを起点とした導線を設計したことで、本人の負担を最小限に抑えた導入が可能となった。
訪問診療は医療サービスであると同時に、「関係設計のサービス」であることを示す事例といえる。
付記情報
・診療科:内科、その他
・病態・症状:糖尿病、がん
・世帯構成:独居