在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/01/27
末期心不全において「自宅で好きに過ごしたい」という本人の希望を尊重し、在宅療養と看取りを支えた事例
要点サマリー
慢性心不全の末期状態にあり、入退院を繰り返していた患者に対し、緩和目的での転院ではなく在宅療養を選択。水分・塩分管理と症状緩和を中心に訪問診療を導入し、本人の「残された時間を自宅で過ごしたい」という希望を実現した。ケアマネにとっては、治療継続よりも生活の優先順位を尊重した支援設計が重要となった症例である。
基本情報
年齢・性別:73歳・男性
居住地:名古屋市瑞穂区
家族構成:本人と妻の二人暮らし(長女は別居)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
福祉給付金資格者証あり
介護保険:要介護2(1割負担)
診断名
・慢性心不全
・大動脈弁閉鎖不全症
・僧帽弁閉鎖不全症
導入の背景
過去に急性心筋梗塞および心原性ショックを発症し、その後長期間にわたり外来通院を継続していた。
その後、自宅で心室細動を発症し救急搬送され、以降は心機能が著しく低下し末期心不全の状態となった。
入退院を繰り返すなかで、予後は数か月程度と見込まれる状況となった。
自宅生活では体重増加を来しやすく、医学的には緩和目的での転院という選択肢も検討されたが、本人より「残された時間であれば、好きなことをして自宅で過ごしたい」という強い希望が示された。
本人・家族の意思を尊重し、退院後の在宅療養を支える体制として訪問診療を導入する方針となった。
介入内容と経過
訪問診療では、心不全症状の悪化予防と苦痛緩和を主眼に置いた関わりを継続した。
水分・塩分制限については過度な制約とならないよう調整し、本人の生活の満足度を優先しながら管理を行った。
症状の変化に応じて訪問頻度を調整し、在宅での経過観察を継続。
本人・妻と適宜意思確認を行い、最終的には在宅での看取りを前提とした支援方針を共有した。
医療対応の詳細
主病:慢性心不全(末期)
対応内容:
・体重変動や呼吸苦の観察
・水分・塩分摂取に関する現実的な調整
・心不全症状に対する対症的緩和
・急変時対応を含めた在宅看取り体制の整理
支援のポイント
・「治療継続」ではなく「どう過ごしたいか」を起点に方針を決定
・緩和転院という選択肢を提示したうえで、本人の在宅希望を尊重
・水分・塩分制限を“守らせる管理”ではなく“生活と折り合う管理”として設計
・主介護者である妻と方針を共有し、不安を最小限にする関わりを継続
考察
本症例は、末期心不全において「医療的に最適な場所」と「本人が望む場所」が必ずしも一致しないことを示している。
ケアマネにとって重要なのは、病状の重症度だけでなく、本人が残された時間をどう使いたいかを丁寧に拾い上げることである。
訪問診療を導入することで、医学的管理を最低限確保しつつ、本人の価値観を最大限尊重した在宅療養が可能となった。
心不全終末期においても、在宅という選択肢が現実的に成立することを示す事例である。
付記情報
・診療科:内科、緩和ケア科、その他
・病態・症状:心不全
・世帯構成:夫婦のみ