在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/01/27
入院回避の意向を尊重し、家族の泊まり込み支援を前提に在宅移行した高齢独居男性の事例
要点サマリー
胆管炎と菌血症を契機にADLが低下した独居高齢男性に対し、本人の強い在宅希望と次男の泊まり込み支援を前提に訪問診療を導入した事例である。
入院継続が医学的に妥当な局面でも、「自宅に戻りたい」という本人の意思を尊重し、医療リスクと在宅支援体制のバランスを調整することで在宅療養への移行を実現した。
基本情報
年齢・性別:93歳・男性
居住地:名古屋市熱田区
家族構成:本人独居(長男は他県在住、次男が泊まり込みで支援)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
介護保険:要介護2(1割負担)
診断名
・胆管炎
・MSSA菌血症
・慢性心不全
・慢性腎不全
導入の背景
徐々にADLが低下し、伝い歩きは可能であるものの全身倦怠感が強く、通院継続が困難な状態となっていた。
この段階で訪問診療の相談があったが、その後自宅内で転倒をきたし、救急搬送のうえ入院となった。
入院中に結石性胆管炎が判明し、内視鏡的治療と抗菌薬治療が行われ、炎症反応は改善傾向を示した。
一方で、全身の活気低下や食事摂取量の減少がみられ、補液を併用する経過となった。
本人はもともと入院に消極的であり、「自宅に戻りたい」という希望を繰り返し表明していた。
抗菌薬治療が一区切りついた段階で在宅復帰の可否が検討され、次男が泊まり込みで支援する意向を示したことから、在宅環境を整えたうえで訪問診療を導入する方針となった。
介入内容と経過
退院前に、在宅療養に必要な生活環境と支援体制を調整した。
独居ではあるが、次男が当面泊まり込みで支援することを前提に、医療的なフォローを訪問診療で担う体制を構築した。
訪問診療では、全身状態・循環動態・感染再燃の兆候に留意しながら、過度な医療介入を避けつつ在宅での安定を目指した。
本人の在宅希望を尊重しつつ、家族とも密に情報共有を行い、無理のない療養継続を支援した。
医療対応の詳細
主病:胆管炎、菌血症、慢性心不全、慢性腎不全
対応内容:
・全身状態、血圧・脈拍など循環動態の定期的評価
・感染再燃や心不全悪化の早期察知
・食事摂取状況や倦怠感の観察
・家族への状態説明と対応方針の共有
支援のポイント
・「入院継続が難しい」のではなく「在宅を選びたい」という本人の意思を起点に支援を設計
・独居でも、家族の泊まり込み支援があれば在宅移行が可能となるケース
・治療終了のタイミングを見極め、医療リスクを整理したうえで在宅へ切り替え
・家族と医療側で役割を明確にし、不安を最小限にした導入
考察
本症例は、高齢・多疾患・独居という条件下でも、本人の意思と家族の支援体制が整えば在宅療養が成立しうることを示している。
ケアマネジャーにとって重要なのは、「独居だから難しい」「高齢だから入院継続」という単純な判断ではなく、
誰が、どの程度、どの期間支援できるのかを具体的に整理する視点である。
訪問診療は、医療的な安全性の担保だけでなく、本人の生活の場を守るための選択肢として有効に機能した事例である。
付記情報
・診療科:内科、その他
・病態・症状:心不全、感染症、その他
・世帯構成:独居