2026/01/23
介護・受診拒否が強い認知症高齢者に対し、事前関係構築を経て訪問診療導入に至った事例
要点サマリー
認知症の進行により介護サービス・受診ともに強い拒否があり、在宅支援が行き詰まっていた症例である。
配偶者の介護負担が極めて高い状況であったが、ケアマネジャー・相談員・かかりつけ医との段階的な調整と、事前訪問による関係構築を行うことで、訪問診療を円滑に導入することができた。
「拒否があるから導入できない」ではなく、「導入の仕方を設計する」ことの重要性を示す事例である。
基本情報
年齢・性別:82歳・男性
居住地:名古屋市守山区
家族構成:妻との二人暮らし
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
介護保険:要介護4
福祉給付金資格者証あり
診断名
・認知症
・糖尿病
・高血圧症
導入の背景
認知症の進行により、介護サービス全般に対して強い拒否があり、サービス利用ができていない状況であった。
医療機関受診に対しても拒否が強く、数か月間にわたり通院が途絶えていた。
本人は妻が外出すると無断で外に出てしまい、帰宅できなくなることもあり、見守りが欠かせない状態であった。
また、歩行能力の低下が進行しており、自宅内では何とか移動できているものの、目を離すと転倒し、そのまま動けなくなる場面も増えていた。
主介護者である妻の身体的・精神的負担は大きく、何らかの訪問系サービスにつなぐ必要性が高いと判断された。
介入内容と経過
ケアマネジャーからの相談時点では、現かかりつけ医への相談がまだ行われていなかったため、まずは相談員より、かかりつけ医へ訪問診療導入の妥当性について意見を求めるよう提案した。
その結果、かかりつけ医からも「訪問診療が妥当」との見解が得られたため、当院での介入方針が決定した。
訪問医への拒否が強く出ることが懸念されたため、事前に相談員が複数回自宅訪問を行い、本人との関係づくりを優先。
本人の了承を得たうえで初診日には相談員が同行し、結果として拒否なく、落ち着いた形で訪問診療を開始することができた。
医療対応の詳細
主病:認知症、糖尿病、高血圧症
対応内容:
・全身状態および認知機能の評価
・転倒リスクを踏まえた生活状況の確認
・服薬状況の確認と今後の管理方針検討
・介護負担を前提とした診療頻度・関わり方の調整
支援のポイント
・強い拒否がある場合でも、段階的な関係構築により導入は可能
・かかりつけ医の意見を事前に確認することで、導入の正当性を共有
・相談員の事前訪問と初診同行が拒否軽減に有効
・医療導入を「目的」ではなく「支援につなぐ手段」として位置づけた点
考察
本症例は、認知症に伴う拒否行動により在宅支援が停滞していたが、導入プロセスを丁寧に設計することで訪問診療が成立した事例である。
ケアマネジャーの視点では、
・拒否がある=導入不可ではないこと
・医療・相談員・家族の役割分担
・「誰が、いつ、どの順で関わるか」の重要性
を示している。
訪問診療は、単なる医療提供ではなく、在宅支援再構築の起点となり得る。
付記情報
・診療科:内科、その他
・病態・症状:認知症、その他
・世帯構成:夫婦のみ