在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/01/23
虐待リスクと生活保護下の独居高齢者に対し、見守り強化を目的として訪問診療を導入した事例
要点サマリー
長年にわたり家族からの虐待歴があり、生活保護を受給する独居高齢女性の症例である。
再虐待リスクを回避するため、介護サービスとあわせて医療的な「人の目」を入れる必要があると判断され、訪問診療を導入した。
医療介入そのものに加え、関係機関との連携とリスク管理を重視した在宅支援の事例である。
基本情報
年齢・性別:87歳・女性
居住地:名古屋市千種区
家族構成:独居(長男は南区在住、次男は千種区在住)
保険・福祉情報
医療保険:生活保護受給
介護保険:要介護2
診断名
・高血圧症
・心不全
・統合失調症
・不眠症
・卵巣がん術後
導入の背景
生活保護受給者であり、長年にわたり長男・次男からの虐待を受けていた経緯がある。
過去に精神状態の悪化を認め、市内の精神科病院にて保護入院となった。
退院後は行政措置により居住地を変更し、長男とは接触しない条件で生活を再構築する方針となったが、本人および次男の理解力が乏しいこともあり、長男との接触が再開されてしまった。
再度、長男に対して本人宅への立ち入り禁止を通達したものの、約束が守られる保証はなく、再虐待リスクが懸念されたため、介護サービスを積極的に導入し「人の目」を増やす方針となった。
その過程で、本人は自力通院が困難であること、また医療的観点からも継続的な見守りが必要と判断され、ケアマネジャー・保護係・福祉課より訪問診療の相談があった。
介入内容と経過
介入前にサービス担当者会議を実施し、
・長男が来訪していた場合の対応
・関係機関への連絡ルート
・緊急時の判断基準
について詳細なすり合わせを行った。
訪問診療開始後は、身体状態の管理に加え、定期的な訪問を通じて生活状況の確認と見守りを行っている。
医療・介護・福祉が連携し、再虐待を防止するための体制を維持している。
医療対応の詳細
主病:高血圧症、心不全、統合失調症、不眠症、卵巣がん術後
対応内容:
・慢性疾患の内科的管理
・精神症状の安定確認
・服薬状況および生活状況の定期確認
・福祉・介護職との情報共有
支援のポイント
・虐待リスクを前提とした在宅支援設計
・医療介入を「治療」だけでなく「見守り機能」として活用
・ケアマネ・福祉課・保護係との密な連携
・問題発生時の対応フローを事前に明確化
考察
本症例は、訪問診療が医療提供にとどまらず、生活安全を支える装置として機能した事例である。
虐待リスクを抱える独居高齢者においては、医療・介護・福祉がそれぞれ独立して動くのではなく、共通認識のもとで支援体制を構築することが重要である。
ケアマネジャーにとっては、
・家族関係に問題を抱えるケース
・生活保護受給者への在宅支援
・医療を「見守り資源」として活用する判断
という観点で参考となる事例である。
付記情報
・診療科:内科、精神科、その他
・病態・症状:心不全、精神疾患、その他
・世帯構成:独居