在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/01/21
認知症進行と通院困難を背景に、福祉制度活用と併せて訪問診療を導入した独居高齢者の事例
要点サマリー
アルツハイマー型認知症の進行により通院が困難となった独居高齢者に対し、経済的不安への配慮と福祉制度活用を前提に訪問診療を導入。
医療・生活両面の負担を軽減しながら、在宅生活の継続を支援した症例である。
基本情報
年齢・性別:77歳・女性
居住地:名古屋市名東区
家族構成:本人独居(長男は名古屋市緑区在住)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
介護保険:要介護2
診断名
・アルツハイマー型認知症
・脊柱管狭窄症
・糖尿病
導入の背景
本人は独居生活を送っていたが、相談の約1年前から理解力の低下や物忘れが目立つようになり、日常生活に支障が出始めていた。
体調不良を訴えることもあり、基幹病院で検査入院を行ったが、内臓疾患などの明らかな異常は認められなかった。
歩行は不安定で、近隣のドラッグストアに行くにも休憩を挟みながらの移動が必要な状況であった。
糖尿病の既往があり定期通院が望ましい状態であったが、タクシー乗車までの歩行が困難なことも多く、長男による通院介助も現実的ではなかったため、訪問診療の検討に至った。
介入内容と経過
面談時、本人は医療費負担を非常に気にしており、長男も「通院が必要」という考えは持ちながらも、経済的な支援は行わない方針であった。
一方で、費用面の心配が解消されるのであれば訪問診療の導入自体には抵抗がないという意向も確認された。
そこで福祉給付金資格者証(丸福)の取得可能性について検討を行い、介入中のヘルパーから日常生活の具体的なエピソードを聴取。
その内容を医師に共有したところ、認知症の状態から取得可能性は十分にあるとの判断が得られた。
この情報を長男へ説明し、
・丸福取得後に訪問診療を導入する
・訪問診療を先行し、並行して丸福取得を目指す
という選択肢を提示した結果、まずは訪問診療を導入する方針となった。
導入後、福祉給付金資格者証の取得が可能となり、現在も訪問診療を継続している。
医療対応の詳細
主病:アルツハイマー型認知症、脊柱管狭窄症、糖尿病
対応内容:
・定期的な全身状態・認知機能の評価
・糖尿病を含む慢性疾患の在宅管理
・通院に代わる医療アクセスの確保
・生活状況を踏まえた医療・介護連携
支援のポイント
・通院困難という身体的制約に対する訪問診療の活用
・医療費不安に対し、福祉制度の活用を前提とした支援設計
・ヘルパーからの生活情報を医療判断に反映
・家族の支援が限定的な独居高齢者に対する継続的な見守り体制の構築
考察
本症例は、認知症の進行により通院が困難となった独居高齢者において、医療導入の可否が経済的不安に左右されやすい現実を示している。
訪問診療を単なる医療提供としてではなく、福祉制度と組み合わせて導入することで、本人・家族双方の心理的ハードルを下げることができた。
ケアマネジャーにとっては、
「訪問診療が必要だが費用面で躊躇があるケース」において、制度活用を含めた段階的導入が有効であることを示す事例といえる。
付記情報
・診療科:内科、その他
・病態・症状:認知症、その他
・世帯構成:独居