在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/01/21
進行直腸がんに対しBSC方針へ移行し在宅療養を選択した夫婦世帯の事例
要点サマリー
直腸がん多発肝転移に対し化学療法を行っていたが病勢進行を認め、本人の意思を尊重しBSC方針へ移行。
自宅で過ごしたいという強い希望を受け、訪問診療を導入し、症状緩和と生活の場の維持を支援した症例である。
基本情報
年齢・性別:80歳・男性
居住地:名古屋市千種区
家族構成:本人・妻の二人暮らし(キーパーソンは徒歩圏内在住の次女)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
介護保険:要介護2
診断名
・直腸がん
・多発肝転移
・後腹膜浸潤
導入の背景
肛門部の痛みを契機に直腸がんと診断され、精査の結果、多発肝転移および後腹膜への浸潤が判明した。
通過障害や出血は認めなかったため、化学療法が先行されたが、治療継続にもかかわらず病勢進行を認めた。
その後、倦怠感の増悪、食事摂取困難、黄疸の進行がみられ、画像上も肝転移の増大を認めた。
本人・妻・次女へ十分な説明が行われた結果、がんに対する積極的治療は行わず、症状緩和を中心としたBSC方針へ移行することとなった。
本人の「自宅で過ごしたい」という強い希望を受け、自宅退院と同時に訪問診療導入の運びとなった。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、全身状態の評価と症状緩和を中心に定期的な診療を実施。
食欲低下や倦怠感に対する評価を行い、必要に応じた薬剤調整を行った。
妻が主たる介護者であり、徒歩圏内に居住する次女と連携しながら、在宅生活が無理なく継続できる体制を整えた。
通院を前提としない医療体制により、本人の身体的負担を最小限に抑えた在宅療養が可能となった。
医療対応の詳細
主病:直腸がん(多発肝転移、後腹膜浸潤)
対応方針:
・BSC方針に基づく症状緩和中心の診療
・食事量低下、全身倦怠感への対応
・通院不要な訪問診療体制の構築
・家族と連携した在宅療養支援
支援のポイント
・本人の意思を尊重し、治療から生活重視の方針へ切り替え
・通院困難な状態でも医療介入を継続できる訪問診療の活用
・妻および近隣に住む次女との情報共有による支援体制構築
・病状進行期における「自宅で過ごす時間」の確保
考察
本症例は、進行がんにおいて治療継続だけでなく、どこで・どのように過ごすかという選択が重要であることを示している。
BSC方針への移行後、訪問診療を導入することで、医療的な安心を保ちながら自宅療養を実現できた点は、支援設計上の重要な示唆となる。
ケアマネジャーにとっては、治療終了後の「生活の場」をどう支えるかを考える際、早期に在宅医療と連携する意義を示す事例である。
付記情報
・診療科:内科、緩和ケア科
・病態・症状:がん
・世帯構成:夫婦のみ