在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/01/21
進行性神経疾患と排尿管理を背景に在宅療養へ移行した夫婦世帯の事例
要点サマリー
脊髄小脳変性症と脊柱管狭窄症を併存し、疼痛とADL低下が進行した患者に対し、退院後の在宅療養を目的に訪問診療を導入。
排尿管理(バルーン留置)と通院負担の軽減を軸に、デイサービス利用との調整や家族介護負担への配慮を行い、在宅生活の継続を支えた症例である。
基本情報
年齢・性別:73歳・男性
居住地:名古屋市守山区
家族構成:本人・妻の二人暮らし(キーパーソンは妻)
保険・福祉情報
医療保険:前期高齢者医療保険(2割負担)
介護保険:要介護4
診断名
・脊髄小脳変性症
・脊柱管狭窄症
導入の背景
脊柱管狭窄症に伴う強い疼痛のため入院治療を受け、その後リハビリ目的で転院となった。
退院の許可は下りたものの、残尿量が多く、バルーンカテーテル留置での退院が必要な状態であった。
本人は自宅退院を強く希望していたが、通院継続には介護負担が大きく、特に妻の負担増加が懸念された。
また、退院後は週3回のデイサービス利用が予定されており、曜日変更が困難な状況であったことから、柔軟な訪問対応が可能な医療体制が求められた。
これらを踏まえ、在宅での医療管理と家族支援を目的として訪問診療導入の相談があり、当院が介入する運びとなった。
介入内容と経過
退院後より訪問診療を開始し、疼痛の評価と全身状態の確認、排尿管理を中心とした医療的フォローを実施している。
バルーン留置に伴うトラブル予防や感染兆候の早期発見に留意し、訪問看護とも連携しながら対応を継続。
デイサービス利用日程を考慮した訪問スケジュール調整を行い、生活リズムを崩さない支援体制を構築した。
また、妻の介護負担軽減を目的に、状態変化時には一時的な入院対応も視野に入れた相談体制を整えている。
医療対応の詳細
主病:脊髄小脳変性症、脊柱管狭窄症
対応方針:
・在宅での疼痛管理と状態安定化を重視
・バルーンカテーテル留置下での排尿管理
・通院を前提としない訪問診療体制の構築
・必要時にはレスパイト目的の入院調整も検討
支援のポイント
・退院直後から在宅医療を導入し、通院負担を最小化
・排尿管理を含めた医療依存度の高い在宅療養への対応
・デイサービス利用との両立を前提とした柔軟な訪問調整
・主介護者である妻の介護疲れを見据えた支援設計
考察
本症例は、進行性神経疾患と整形外科的疾患を併存する患者において、退院後の生活設計が在宅療養の成否を左右することを示している。
医療的管理だけでなく、介護サービス利用状況や家族の生活負担を踏まえた調整が、在宅生活の継続には不可欠である。
訪問診療は、治療継続の手段にとどまらず、退院後の生活を成立させるための調整機能として重要な役割を果たすことが、本事例から再確認された。
付記情報
・診療科:内科、その他
・病態・症状:その他
・世帯構成:夫婦のみ