在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/01/21
非結核性抗酸菌症の進行を背景に在宅療養へ移行した夫婦同居世帯の事例
要点サマリー
非結核性抗酸菌症の進行により予後が限られると説明を受けた患者に対し、入院治療から在宅療養へ移行。
専門病院との連携を維持しつつ、内服治療を中心とした訪問診療を導入することで、本人・家族の「自宅で過ごしたい」という希望を実現した症例である。
基本情報
年齢・性別:77歳・女性
居住地:名古屋市千種区
家族構成:本人・夫の二人暮らし(キーパーソンは夫、娘は同区内在住)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険(2割負担)
介護保険:要介護4
診断名
・非結核性抗酸菌症
・関節リウマチ
導入の背景
関節リウマチおよび非結核性抗酸菌症にて、複数の専門医療機関へ通院していた。
両側足関節炎の増悪と非結核性抗酸菌症の病勢進行を契機に入院となった。
入院後、関節炎についてはステロイド関節注射により速やかに改善したが、非結核性抗酸菌症については、すでに治療選択肢が限られている状況であることが説明されていた。
当初は「最期まで病院で診てもらいたい」という思いから入院を選択していたが、療養を続ける中で本人・家族ともに「自宅での生活を大切にしたい」という意向が強くなった。
治療内容も内服中心に切り替わり、入院を継続する医学的必然性が低下したことから、在宅医療を併用した退院が検討され、訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
退院後は、内服治療を継続しながら訪問診療を開始。
呼吸状態、全身状態、関節症状の変動を定期的に確認し、急性増悪の兆候に注意しながら在宅療養を支援している。
夫が主たる介護者として生活を支え、近隣に住む娘とも連携を取りながら、無理のない在宅体制を維持している。
現在は大きな急変なく、自宅での療養が継続できている。
医療対応の詳細
主病:非結核性抗酸菌症
併存疾患:関節リウマチ
対応方針:
・内服治療を継続しながら在宅での経過観察
・症状増悪時の早期対応を目的とした訪問診療
・入院治療を前提としない療養設計
・専門病院との情報共有を継続
支援のポイント
・「病院で最期を迎える」から「自宅で過ごす」への意向変化を丁寧に受け止めた支援
・治療選択肢が限られる状況下での在宅療養という現実的選択
・夫をキーパーソンとした家族支援と役割整理
・専門病院と在宅医療の役割分担を明確にした連携体制
考察
本症例は、治療の限界が見えてきた段階においても、療養の場を選ぶ自由があることを示している。
在宅医療の導入により、「治療を続けるか」ではなく「どこで、どう過ごすか」という視点で意思決定が行われた。
非結核性抗酸菌症のように長期経過をたどりつつ最終的に進行する疾患では、早い段階から在宅療養という選択肢を提示することが、本人・家族の納得感につながる。
訪問診療は、病状管理だけでなく、生活と意思決定を支える役割を担うことが改めて示された。
付記情報
・診療科:内科、その他
・病態・症状:その他
・世帯構成:夫婦のみ