在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/01/21
多系統萎縮症の進行に伴い通院困難となり訪問診療を併用導入した事例
要点サマリー
進行性神経変性疾患である多系統萎縮症により移動能力が低下し、通院継続が困難となった患者に対し、基幹病院フォローを維持しながら訪問診療を併用導入した。
医療的侵襲を最小限にしつつ、進行に備えた在宅支援体制を整え、本人・家族の意思を尊重した療養環境を構築した症例である。
基本情報
年齢・性別:61歳・男性
居住地:名古屋市千種区
家族構成:本人・妻・息子の三人暮らし(キーパーソンは妻)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
介護保険:要介護4
特定医療費受給者証あり
診断名
・多系統萎縮症
導入の背景
ふらつきを自覚して以降、歩行障害が徐々に進行し、排尿障害などの自律神経症状も加わった。
画像所見および臨床経過より多系統萎縮症と診断され、以後、緩徐に進行する経過をたどった。
車いす生活となり、睡眠時無呼吸症候群に対してはCPAPを使用していたが、呑気の出現により中止となった。
気管切開や胃ろうについては説明を受けたが、本人は現時点では希望されなかった。
経口摂取は保たれていたものの、排尿障害は進行傾向にあり、通院負担が増大。
かかりつけ医および神経内科への定期通院を継続していたが、移動の困難さから在宅医療への切り替えを希望され、訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
基幹病院の神経内科フォローは継続しつつ、在宅では月2回の訪問診療を実施。
全身状態、神経症状の進行、排尿状況、生活動作の変化を定期的に確認した。
医療的処置は行わず、病状進行に応じた説明と生活支援を中心に介入。
本人・家族と継続的に意思確認を行い、今後の選択肢についても段階的に共有している。
医療対応の詳細
主病:多系統萎縮症
対応方針:
・進行性疾患であることを前提とした経過観察
・通院困難を補完する在宅診療体制の構築
・侵襲的医療は行わず、本人意思を尊重した支援
・基幹病院との連携継続
支援のポイント
・進行性神経疾患における「通院併用型」訪問診療の活用
・気管切開や胃ろうといった将来的選択肢を急がず、段階的に共有
・妻を中心とした家族支援と意思決定サポート
・症状進行に備えた在宅療養環境の整理
考察
本事例は、治療による改善が見込めない進行性疾患において、「治療のための医療」から「生活を支える医療」へ移行する過程を丁寧に設計したケースである。
訪問診療を全面移行ではなく併用とすることで、専門医フォローを維持しつつ、生活負担を軽減する選択が可能となった。
多系統萎縮症のような疾患では、症状そのものよりも「進行にどう向き合うか」を支える体制づくりが、在宅医療の重要な役割であることが示唆される。
付記情報
・診療科:内科、神経内科、その他
・病態・症状:その他
・世帯構成:親子