在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/01/20
非代償性肝硬変による肝性胸水に対し在宅で定期的な胸水管理を見据えて訪問診療を導入した事例
要点サマリー
非代償性肝硬変に伴う肝性胸水により、定期的な胸水穿刺を要する状態となった症例である。
ADLは概ね自立しているものの、難聴や軽度の認知機能低下により自己管理が困難であり、主介護者である同居の長女の負担も増大していた。
自宅退院を強く希望する本人の意向を尊重しつつ、施設入所前の「ワンクッション」として訪問診療を導入し、在宅療養と介護負担軽減の両立を図った事例である。
基本情報
年齢・性別:78歳・男性
居住地:名古屋市昭和区
家族構成:本人・長女の二人暮らし
妻:癌で他界
長男:東京在住
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
介護保険:要介護1
診断名
・非代償性肝硬変
・肝性胸水
・肝性脳症
・認知症疑い
・難聴
導入の背景
食道静脈瘤破裂の既往があり、その後も肝硬変に伴う合併症として肝性脳症を繰り返していた。
肝性胸水の貯留が進行し、定期的な胸水穿刺が必要な状態となった。
ADLはほぼ自立しているものの、重度の難聴により口頭でのコミュニケーションが困難であり、重要な説明時には筆談を要する状況であった。
発言内容はしっかりしている一方で、短期記憶障害など認知機能低下を疑うエピソードもみられ、内服の自己管理は困難であった。
主介護者である長女は日中仕事をしており、介護負担の蓄積もみられていた。
本人の自宅退院希望が強かったことから、施設入所を見据えつつも、その前段階として訪問診療を導入し在宅退院とする方針となった。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、肝性胸水による呼吸苦の出現状況を重点的に評価し、必要時に胸水穿刺を行う体制を整えた。
胸水穿刺後は呼吸困難感の軽減が得られており、症状緩和を目的とした在宅管理が可能となった。
内服については自己管理が困難なため、服薬管理方法を調整し、長女の負担が過度とならないよう支援を行った。
コミュニケーションに関しては、筆談を併用しながら本人の理解を確認し、意思を尊重した関わりを継続した。
医療対応の詳細
主病:非代償性肝硬変、肝性胸水、肝性脳症
対応方針:
・肝性胸水に対する定期的評価と必要時の胸水穿刺
・症状緩和を重視した在宅管理
・内服自己管理困難に対する支援調整
・認知機能低下・難聴をふまえた説明方法の工夫
支援のポイント
・定期的な胸水穿刺を在宅で行える体制を整えた点
・難聴に配慮し、筆談を含めた丁寧な意思確認を行った点
・同居家族(長女)の介護負担軽減を目的に訪問診療を導入した点
・施設入所を見据えた「段階的な支援移行」として在宅医療を位置づけた点
考察
本症例は、医療依存度が高まりつつある肝硬変患者に対し、本人の在宅希望と家族の介護負担の間で現実的な落とし所を探った事例である。
いきなり施設入所とするのではなく、訪問診療を「ワンクッション」として導入することで、本人の納得感を保ちながら支援体制を整えることができた。
ケアマネジメントの視点では、今後の負担増加を見越した支援設計と、次の選択肢(施設)を否定せずに提示する関わりの重要性を示している。
付記情報
・診療科:内科、緩和ケア科、その他
・病態・症状:心不全、その他
・世帯構成:親子