在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/01/20
多発性肝細胞癌と非代償性肝硬変に対し在宅で腹水管理を見据え訪問診療を導入した事例
要点サマリー
C型肝炎を背景とした非代償性肝硬変に、多発性肝細胞癌を合併し、腹水貯留が進行した症例である。
治療適応がなくBSC方針となった後、退院に伴い通院が困難となったため訪問診療を導入した。
在宅での腹水管理(穿刺の可能性)を見据え、訪問看護・介護保険申請を同時に調整した点が、ケアマネにとって重要な支援判断ポイントとなる事例である。
基本情報
年齢・性別:70歳・男性
居住地:名古屋市千種区
家族構成:本人・妻の二人暮らし
子ども:5人(市内2人、市外2人、県外1人)
キーパーソン:妻
保険・福祉情報
医療保険:生活保護
介護保険:申請中(入院中に新規申請)
診断名
・多発性肝細胞癌
・C型肝炎(IFN治療後)
・非代償性肝硬変
・糖尿病
導入の背景
C型肝炎を背景とした肝硬変が進行し、多発性肝細胞癌を合併。腹水貯留の増悪により入院管理となった。
肝細胞癌は多発しており、肝機能低下も著明であったため、積極的治療の適応はなくBSC方針が選択された。
入院中は利尿剤により腹水コントロールが行われていたが、退院後は通院継続が困難と判断された。
在宅療養を継続するため、訪問診療を導入し、腹水増悪時には在宅での穿刺対応が可能となる体制構築を目的に介入することとなった。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、肝機能および全身状態のモニタリングを中心に、症状緩和を目的とした診療を実施した。
腹水については、利尿剤調整を行いながら経過観察とし、必要時に在宅穿刺が行えるよう訪問看護と連携体制を構築した。
在宅療養開始にあわせて介護保険を新規申請し、今後の生活支援や医療依存度上昇に備えた基盤整備を進めた。
医療対応の詳細
主病:多発性肝細胞癌、非代償性肝硬変
合併症:C型肝炎既往、糖尿病
対応方針:
・BSC方針のもと症状緩和を重視
・腹水貯留に対する内服調整と在宅穿刺の準備
・通院に依存しない在宅完結型の医療提供
支援のポイント
・治療適応がない段階で在宅医療へ円滑に移行した点
・腹水穿刺を見据え、訪問看護を早期に組み込んだ支援設計
・生活保護下での医療・介護制度調整
・同居配偶者を中心としつつ、複数の子どもが存在する家族構成への配慮
考察
本症例は、肝硬変と多発肝細胞癌により医療依存度が徐々に高まる過程において、退院時から在宅医療・看護・介護を同時に整備した例である。
腹水管理は在宅療養継続の可否を左右する要素であり、早期から穿刺対応を含めた医療体制を準備することが、入院回避と生活の安定につながった。
ケアマネジメントの観点では、「いま困っていること」だけでなく、「近い将来に必要となる医療行為」を想定した支援設計の重要性を示す事例である。
付記情報
・診療科:内科、緩和ケア科、その他
・病態・症状:がん、その他
・世帯構成:夫婦のみ