在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/01/15
悪性胸膜中皮腫に対しBSC方針のもと在宅で疼痛・腹水管理を行った事例
要点サマリー
悪性胸膜中皮腫に対して化学療法を行い一時的に病勢コントロールが得られたものの、その後再発・進行を認めBSC方針へ移行した症例である。
通院継続が困難となり、在宅での日常的な疼痛管理と腹水穿刺、将来的な在宅看取りを見据えて訪問診療を導入した。
ケアマネにとっては、比較的若年で配偶者と二人暮らしという世帯背景の中で、医療依存度が急速に高まる過程をどう支えるかが判断ポイントとなった事例である。
基本情報
年齢・性別:69歳・男性
居住地:名古屋市千種区
家族構成:本人・妻の二人暮らし
長女:近隣在住(協力的)
保険・福祉情報
医療保険:国民健康保険(3割負担)
介護保険:申請中
診断名
・悪性胸膜中皮腫
・癌性腹膜炎
導入の背景
心筋梗塞後の画像検査を契機に、左優位の胸水および胸膜病変を指摘され、専門医療機関でのフォローが開始された。
胸痛や労作時呼吸困難の増悪を認め、精査の結果、悪性胸膜中皮腫と診断された。
化学療法により一時的に病勢は安定したものの、その後再度呼吸困難と胸水増加を認め再発と判断された。
二次治療も実施されたが病状は進行し、以降はBSC方針へ移行となった。
癌性疼痛に対してはオピオイド内服を開始し、腹水増加に対しては適宜穿刺対応が必要な状態となった。
通院継続が困難となったため、在宅での日常的な疼痛管理および腹水穿刺、将来的な在宅看取りを見据えて訪問診療を導入することとなった。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、抗がん治療は行わず、症状緩和を中心とした医療介入を実施した。
癌性疼痛に対してはオピオイドの調整を行い、日常生活における苦痛軽減を図った。
腹水増加に対しては、状態に応じて在宅での腹水穿刺を実施し、入院を回避しながら在宅療養を継続した。
妻および近隣在住の長女と情報共有を行い、在宅療養が継続可能となるよう支援体制を整えた。
医療対応の詳細
主病:悪性胸膜中皮腫
合併症・関連病態:癌性腹膜炎
対応方針:
・BSC方針のもと症状緩和を最優先
・在宅での日常的な疼痛管理
・必要時の在宅腹水穿刺対応
・通院負担を避け、在宅中心の医療提供
支援のポイント
・通院困難となる前段階で訪問診療へ切り替えた判断
・癌性疼痛および腹水という症状に対する在宅対応体制の構築
・比較的若年患者における心理的・家族的支援への配慮
・配偶者および協力的な家族との役割分担の整理
考察
本症例は、悪性胸膜中皮腫という進行性疾患において、治療終了後の生活をいかに在宅で支えるかが問われた事例である。
BSC方針へ移行する段階で訪問診療を導入したことで、症状悪化時も入院に依存せず、在宅療養という選択肢を維持することが可能となった。
ケアマネジメントの視点では、医療依存度が短期間で高まるケースにおいて、在宅で対応できる範囲と限界を医療と共有しながら支援を組み立てることの重要性が示された。
付記情報
・診療科:内科、緩和ケア科、その他
・病態・症状:がん、その他
・世帯構成:夫婦のみ