在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/01/15
乳がん再発・脊椎転移に対しBSC方針のもと在宅療養へ移行した事例
要点サマリー
左乳がん再発に対して長期に内分泌治療を継続していたが、頭蓋骨転移・髄膜播種・脊椎転移が判明し、ADLおよび認知機能の低下が進行した症例である。
全脳照射および脊椎照射後、これ以上の抗がん治療は希望せずBSC方針となり、在宅での生活を優先して訪問診療を導入した。
ケアマネにとっては、治療終了後の生活再設計と、夫婦二人暮らし世帯における支援バランスの調整が重要となった事例である。
基本情報
年齢・性別:78歳・女性
居住地:名古屋市千種区
家族構成:本人・夫の二人暮らし
長男:名古屋市内在住
保険・福祉情報
後期高齢者医療保険(1割負担)
介護保険:要介護4
福祉給付金資格者証あり
診断名
・左乳がん再発
・転移性骨腫瘍
・脊椎転移
・廃用症候群
導入の背景
左乳がん再発に対し、2012年よりA病院にて内分泌治療を継続していた。
2021年9月末頃からふらつきや転倒を繰り返すようになり、精査の結果、頭蓋骨転移および髄膜播種を認めた。またT9(胸椎)にも新規転移が判明した。
同年10月、全脳照射およびT9への放射線照射目的でA病院へ入院したが、入院期間中にADLと認知機能の緩やかな低下がみられた。
本人・家族で今後の治療方針について話し合いを行い、これ以上の抗がん治療は希望せず、BSC方針とすることを決定した。
治療終了後は自宅での生活を希望されたため、2021年10月末に退院し、症状緩和と生活支援を目的として訪問診療を開始する運びとなった。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、がん治療そのものではなく、全身状態の把握と生活の安定を主眼とした診療を実施した。
脊椎転移および廃用症候群によるADL低下に配慮し、転倒予防や生活動線の確認を行いながら、無理のない在宅生活を支援した。
夫が同居しているものの、高度な介護負担が集中しないよう、介護保険サービスとの連携を図りながら在宅療養を継続した。
医療対応の詳細
主病:左乳がん再発(骨転移・脊椎転移)
医療的課題:
・骨転移による疼痛リスク
・ADL低下および廃用症候群
対応方針:
・抗がん治療は行わずBSC方針
・症状緩和と生活の質の維持を優先
・通院負担を回避し在宅での医療管理を実施
支援のポイント
・治療終了後の「生活の場」を明確に在宅へ切り替えた判断
・夫婦二人暮らし世帯における介護負担の見極め
・病状進行を前提とした、過不足のない医療介入設計
・家族とケアマネが共通認識を持てるBSC方針の共有
考察
本症例は、がん治療の終了がそのまま在宅医療への移行を意味する典型例である。
病勢の進行とともにADLや認知機能が低下する中で、早期にBSC方針を共有し、生活を中心とした医療設計へ切り替えたことが在宅療養の安定につながった。
ケアマネジメントにおいては、**「治療が終わった後をどう支えるか」**という視点が重要であり、医療・介護双方が同じゴールを共有することの意義が示された。
付記情報
・診療科:内科、緩和ケア科、その他
・病態・症状:がん、その他
・世帯構成:夫婦のみ