在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/01/13
進行膀胱がんに対し、在宅での腹水穿刺・輸血を含めた終末期支援を行った事例
要点サマリー
浸潤性膀胱がんに多発リンパ節転移・腹膜播種・腹水を伴い、化学療法・免疫療法・放射線治療いずれも継続困難となった症例である。
自宅での療養を希望されたため、在宅での腹水穿刺および輸血対応を含めた訪問診療を導入し、看取りを前提とした支援体制を構築した。
ケアマネにとっては、高度な医療依存度があっても、在宅で対応可能な医療内容を整理することで在宅看取りが成立すること、また家族同居を軸に支援設計を行う重要性が示唆される事例である。
基本情報
年齢・性別:73歳・女性
居住地:名古屋市守山区
家族構成:本人・長女の二人暮らし
長男:名古屋市内在住
保険・福祉情報
前期高齢者医療保険(2割負担)
介護保険:要介護4
福祉給付金資格者証あり
診断名
・浸潤性膀胱がん
・多発リンパ節転移
・腹膜播種
・腹水
・癌性貧血
導入の背景
2020年10月、膀胱腫瘍疑いにてA病院腎臓内科から泌尿器科へ紹介され、MRI検査により浸潤性膀胱がん(T3b以上 N1Mx)と診断された。
同年12月初旬に経尿道的膀胱切除術を施行し、病理では高度異型度の尿路上皮癌と判明した。
その後、GC(GEM/CDDP)療法および放射線治療を実施したが、血小板低下のためGC療法は中止。免疫チェックポイント阻害薬(キートルーダ)を導入するも皮疹が出現し休止、その後は病勢進行(PD)となった。
腹水に対しては利尿剤治療を行ったが効果乏しく、穿刺による排液が必要な状況であった。また癌性貧血に対しても、適宜輸血を要していた。
名古屋市在住の長女宅へ退院し、自宅で過ごしたいという本人・家族の希望が強く、在宅での腹水穿刺および輸血対応を含めた在宅看取りを目的として、訪問診療を導入することとなった。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、腹水貯留による腹部膨満感や全身倦怠感に対し、在宅での腹水穿刺を実施し症状緩和を図った。
癌性貧血に対しては、状態を評価しながら必要に応じて輸血対応を行った。
長女が同居しており、日常生活および医療対応の支援を担う体制が整っていたため、在宅での療養を継続することが可能であった。
病状進行に伴い全身状態は徐々に低下したが、入院は選択せず、在宅での看取りを前提とした支援を継続した。
医療対応の詳細
主病:浸潤性膀胱がん(多発転移、腹膜播種)
医療的課題:
・腹水による症状悪化
・癌性貧血による全身倦怠感
対応方針:
・在宅で可能な医療処置(腹水穿刺、輸血)を最大限活用
・延命治療ではなく症状緩和を重視
・家族の介護力をふまえた在宅看取り支援
支援のポイント
・在宅での腹水穿刺・輸血対応により入院回避を実現
・同居家族(長女)の存在を軸とした支援体制構築
・治療終了後の「生活と最期」を見据えた医療設計
・医療と介護が役割分担しながら在宅療養を支援
考察
本症例は、進行がんで高度な医療的支援を要する状況であっても、在宅で対応可能な医療内容を整理し、家族支援体制を整えることで在宅看取りが実現できることを示している。
腹水穿刺や輸血といった医療行為を在宅で行えるかどうかは、在宅移行判断の重要な分岐点となる。
ケアマネジメントにおいては、「どこまで在宅でできるか」ではなく、「何を在宅でやるか」を医療側とすり合わせることが、本人の希望を叶える鍵となる。
付記情報
・診療科:内科、緩和ケア科、その他
・病態・症状:がん、その他
・世帯構成:親子