在宅医療の事例紹介(個人宅)2026/01/13
独居高齢者の肺がん・がん性胸膜炎に対し、在宅医療と施設療養を段階的に併用した事例
要点サマリー
左肺がんおよびがん性胸膜炎による胸水貯留を抱える独居高齢者に対し、本人の「できる限り自宅で過ごしたい」という意向を尊重し、在宅での胸水穿刺を含む訪問診療を導入した症例である。
在宅療養の限界を見据えながら、状態変化に応じて施設療養へ移行し、在宅・施設の双方で訪問診療を継続した。
ケアマネにとっては、独居であっても社会的支援を活用することで在宅療養が成立すること、また在宅から施設への段階的移行を前提とした支援設計の重要性が示唆される事例である。
基本情報
年齢・性別:89歳・女性
居住地:名古屋市南区
家族構成:本人独居
キーパーソン:義妹(同区内在住)
※夫の弟とその妻(義妹)が近隣に居住し、必要時の支援を担っていた
保険・福祉情報
後期高齢者医療保険(1割負担)
介護保険:要支援2(1割負担)
福祉給付金あり
診断名
・左肺がん
・がん性胸膜炎
・胸水貯留
・頚椎症
導入の背景
本人は独居で生活していたが、ADLは自立しており、日常生活は可能な限り自身で行っていた。困難な部分については、友人や義妹の支援を受けながら生活を維持していた。
左変形性膝関節症に対する人工関節置換術の術前検査を契機に肺がんが判明。本人および家族へ説明は行われたが、積極的治療は希望されず、経過観察を選択された。
その後、胸水貯留を認め、通院先からはコントロール目的での入院が提案されたが、「できる限り自宅で過ごしたい」という本人の強い希望があり、在宅での対応が検討された。
自宅療養が困難となった場合には、ホスピス入院や施設入所への移行も視野に入れる方針とし、訪問診療を導入することとなった。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、胸水による呼吸苦に対して、在宅での胸水穿刺を実施し、症状緩和を図った。
独居であることをふまえ、日常生活の自立度を維持しながら、義妹や周囲の支援者と連携し、在宅療養を継続した。
病状の進行に伴い、在宅生活の継続が困難となったため施設へ入所。施設入所後も当院が引き続き訪問診療を行い、最終的には施設にて看取りとなった。
医療対応の詳細
主病:左肺がん、がん性胸膜炎
医療的課題:
・胸水貯留による呼吸苦
・独居環境下での急変リスク
対応方針:
・在宅で可能な範囲での症状緩和(胸水穿刺)
・入院ありきではなく、本人の生活意向を尊重した医療提供
・在宅困難時には速やかに施設療養へ移行できる体制整備
支援のポイント
・独居であっても、近隣キーパーソンの存在により在宅療養が成立
・入院回避を目的とした在宅胸水穿刺の活用
・在宅療養の「限界」をあらかじめ共有し、施設移行をスムーズに実施
・在宅・施設いずれのフェーズでも医療の連続性を確保
考察
本症例は、独居高齢者であっても、本人の生活力と社会的支援を適切に評価することで在宅療養が成立することを示している。
また、在宅療養を「最後まで在宅」と捉えるのではなく、在宅 → 施設という段階的な支援設計を行うことで、本人の希望と現実的な医療提供の両立が可能となった。
ケアマネジメントにおいては、独居=在宅困難と短絡的に判断せず、支援資源の整理と将来の移行先を含めたプランニングが重要であることを示唆する事例である。
付記情報
・診療科:内科、緩和ケア科、その他
・病態・症状:がん、その他
・世帯構成:独居