在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/12/23
レビー小体型認知症を抱える81歳女性に訪問診療を導入し、家族介護と経済的負担を軽減した事例
要点サマリー
レビー小体型認知症および脳梗塞後遺症を有する高齢女性に対し、訪問診療を導入することで通院負担と家族の経済的・身体的負担を軽減した事例である。訪問診療と介護保険サービスを組み合わせることで、家族のみで抱え込んでいた介護体制を見直し、在宅生活の安定化につなげた。
基本情報
年齢・性別:81歳・女性
居住地:名古屋市中区
家族構成:本人・夫・長女の3人暮らし
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
介護保険:要介護2(1割負担)
福祉給付金あり
診断名
レビー小体型認知症
脳梗塞後遺症
腰椎圧迫骨折
導入の背景
2022年10月、ケアマネジャーの変更を契機に、これまで利用されていなかった介護保険サービスの見直しが行われた。
同居している長女は、介護保険サービスを十分に活用せず、ほぼ独力で介護を担っていたが、金銭的負担や生活の疲弊が顕在化していた。
医療面では、訪問診療という選択肢を知らず、本人と夫はいずれも毎回タクシーを利用して通院を継続しており、月に約3万円前後の交通費負担が生じていた。
新たに担当となったケアマネジャーより訪問診療の提案がなされ、長女への説明を経て、在宅で医療を受ける体制への切り替えが了承され、訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後は、定期的な診察を在宅で実施し、認知症症状や身体状況の変化を継続的に評価した。
通院が不要となったことで、本人・家族ともに移動の負担が大きく軽減され、生活リズムも安定した。
また、介護保険サービスの導入と併せて、長女一人に集中していた介護負担が分散され、在宅生活を無理なく継続できる環境が整えられた。
医療対応の詳細
主病:レビー小体型認知症
併存疾患:脳梗塞後遺症、腰椎圧迫骨折
対応内容:定期訪問診療による全身状態・認知機能の評価、生活状況の把握、介護サービスとの連携
支援のポイント
訪問診療という選択肢の提示
在宅で医療を受けられることを丁寧に説明し、通院が前提となっていた生活構造を見直した。
家族介護の「抱え込み」からの脱却
介護保険サービスと医療の導入により、長女単独での介護体制を緩和した。
経済的負担の可視化と軽減
タクシー通院に伴う高額な交通費負担を解消し、生活全体の安定につなげた。
考察
本事例は、医療や介護サービスを「知らなかった」ことにより、家族が過剰な負担を背負っていた典型的なケースである。
訪問診療の導入は、単に医師が自宅を訪れるという意味にとどまらず、生活構造そのものを見直す契機となった。
在宅医療の役割は、疾患管理だけでなく、家族の生活・経済・介護力を含めた全体像を調整する点にある。本症例は、その意義を示す事例である。
付記情報
診療科:内科、精神科、その他
病態・症状:認知症、脳卒中後遺症、その他
世帯構成:親子