在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/12/12
転倒後のADL低下に対し、短期訪問診療と家族連携で施設入所へ円滑移行できた症例(75歳男性)
基本情報
年齢・性別:75歳・男性
居住地:名古屋市名東区
家族構成:妻と同居。長女(豊明市在住)、次女(日進市在住)
保険・制度:後期高齢者医療保険(2割負担)、介護保険申請後に要介護4(1割負担)、身体障害者手帳所持、福祉給付金あり
保険・福祉情報
後期高齢者医療保険(2割負担)
介護保険:要介護4(1割負担)
身体障害者手帳所持
福祉給付金あり
診断名
腰痛、筋力低下、左手火傷、左足褥瘡
導入の背景
約半年前の転倒を契機に腰痛とADL低下が進行。近隣のTクリニックでの通院が途絶え、訪問診療導入前の2週間はトイレへの移動も困難であった。
さらに、膝の筋力低下による立位・歩行の困難、左手の火傷、左足の褥瘡など複合的な身体管理が必要となり、通院困難と生活リスクの増大を受けて当院訪問診療を導入した。
介入内容と経過
初回訪問時より、家族は施設入所を強く希望していたため、介護保険の新規申請を早急に実施。要介護4の結果を受け、特別養護老人ホームへの入所が決定した。
訪問診療の役割は、入所までの短期間における医療管理と生活安全の確保であり、入所決定後に医療介入は終了した。
これにより、在宅生活が困難になっていた患者に対して、次の生活環境へ安全に移行できる支援を提供することができた。
医療対応の詳細
主な症状・課題と対応
| 症状・課題 | 対応内容 |
|---|---|
| 腰痛・筋力低下 | 疼痛コントロール、移動補助のための生活指導 |
| 左手の火傷 | ガーゼ保護にて処置し、治癒を確認 |
| 左足褥瘡 | 創部管理、体位調整を実施し改善傾向 |
支援のポイント
疼痛管理と初期対応の迅速さ
通院困難な状態でも、訪問診療導入により身体的苦痛の早期緩和と生活安全の確保が可能となった。
家族連携による施設入所へのスムーズな移行
介護保険申請から入所決定までを一貫して支援。家族と密に情報共有し、タイムロスのない支援体制を構築した。
褥瘡・火傷など小外傷への即時対応
創傷の早期評価と処置により重症化を防ぎ、在宅期間中の安全性を高められた。
考察
本症例は、在宅療養が困難な高齢者に対し、施設入所までの“橋渡し”として訪問診療が機能した典型例である。
訪問診療は“在宅で最期まで”というイメージが強いが、実際には以下のような役割も担う。
-
在宅生活が限界となった患者の安全確保
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介護保険申請や多職種連携による次ステージへの移行支援
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家族の意思を踏まえた医療・介護計画の調整
本人と家族の希望を尊重しながら、短期間でも医療が介在することで、より適切な生活環境へつなぐことが可能となることを示した事例である。
付記情報
・診療科:内科、整形外科、その他
・病態・症状:脳卒中後遺症、心不全、パーキンソン病、その他
※本症例では「筋力低下・褥瘡等の身体機能低下」を該当項目として運用
・世帯構成:夫婦のみ