コラム2020/02/20
在宅医療の基礎知識 中心静脈栄養の管理ついて
在宅医療の基礎知識 中心静脈栄養の管理ついて
在宅医療の基礎知識、今回は「中心静脈栄養(TPN)」について解説致します。
中心静脈栄養(TPN)とは
心臓に近く太い血管である中心静脈から投与する点滴のことを言います。血管内に直接栄養を投与するため、管理が不適切だとカテーテルから感染を起こす危険があります。また、長期間在宅などでTPNが必要な場合は、CVポートという繰り返し点滴を穿刺できる機具を皮下に埋め込むことがあります。
中心静脈栄養の注意点
経管栄養は自分の「消化管」を使った栄養法ですが、胃腸の機能が大きく低下している場合(お腹を手術した後、癌による腹膜炎、腸閉塞など)には、経管栄養が実施できません。そのような場合には、TPNを選択します。TPNは、自分の「血管・血液」を使った栄養法で、投与されるものは栄養ですが、血管の中に直接投与するため、厳格な衛生管理(無菌操作)が必要です。万が一、細菌が混入すれば、発熱を繰り返し、せっかく造設したポートを入れ替えなければなりません。
始める前に手をきれいにする
TPNに関わるものを操作する前には手指をアルコール消毒します。一番注意しなければならないのは、おむつを処置した後にそのままTPNを触ったりすることです。普段から、清潔の手袋を着用し、手袋をしたうえからアルコール消毒をすると、手袋の表面はほぼ無菌になります。
針を刺す前の消毒をしたら乾くまで待つ
まず刺す部位の周囲の消毒を行います。アルコール綿とポビドンヨードなどの消毒液を使う場合が多いですが、いずれにしても消毒したら、自然乾燥するまで待つことが大切です。待つと待たないのでは、殺菌力に大きな差がでます。
針、管の接続部分は触らない
針の扱いは非常に重要です。皮膚に入る部分に触ったり、周りのものにつかないようにしてください。
栄養製剤は薄め少量から徐々に濃度と量を増やす
急激に高濃度の栄養点滴を開始すると高血糖などの問題が起こることから、通常は薄めのものを少量から使用し、徐々に濃度と量を増やしていきます。
いつもと違う、異変がある場合は
穿刺部が赤くなっている
感染している可能性があります。早めに医師の診察をうけてください。
穿刺部の周囲が腫れてきた
輸液が皮下に漏れている可能性があります。そのまま漏れ続けると皮下が炎症を起こし、CVが使えなくなることがあります。まずは輸液を止め、医師が看護師に連絡してください。
ポンプのアラームが鳴る
アラームに表示されているエラーメッセ―ジを確認してください。
「閉塞」⇒輸液が流れていません、というメッセージが流れます。たいていはクレンスが閉じているか、チューブのどこかが折れていることによるものです。確認して問題があれば、対処してください。
「気泡」⇒チューブの中に気泡が入ってしまったケース。輸液バッグを動かしたり、下ろしたりしたときに起こることが多いです。慣れてくれば、チューブの操作で解決できることもありますが、医師か看護師に連絡し、チューブを交換してもらうのが確実です。
点滴が落ちなくなった
チューブが閉塞していないのに点滴ができなくなった場合、ポートに問題が発生している可能性があります。医師に連絡してください。
熱が出る
原因のはっきりしない発熱を繰り返す場合、ポートに感染している可能性が疑いです。放置すれば敗血症に進行する可能性があり、早めに対処が必要です。
TPNに関するQA
点滴のチューブや針やどれくらい使えますか?
通常は一週間前後で交換します。
針は家族で刺すこともできますか。
ご家族であればできます。手技は医師や看護師からよく指導を受けてください。
点滴のバッグをヘルパーさんに変えてもらってもよいですか。
点滴のバッグは通常1日1回交換です。医療行為に含まれるので、ご家族以外で実施できるのは、医師か看護師のみです。ヘルパーさんにはお願いできません。
しばらく点滴を止めても大丈夫でしょうか。
ヘパリンや整理食塩水で「ロック」しておけば、長期間、使用しなくても大丈夫です。また、24時間以内であれば、特別な処置をしなくても問題ないことが多いです。