在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/12/11
在宅で安定した療養生活を継続できた多疾患高齢女性の事例
基本情報
年齢・性別:87歳・女性
居住地:名古屋市中川区
家族構成:独居。キーパーソンは隣接市在住の長女。長男は他県在住。
保険・制度:後期高齢者医療保険(1割負担)、要介護3(1割負担)、福祉給付金あり
保険・福祉情報
後期高齢者医療保険(1割負担)
介護保険:要介護3(1割負担)
福祉給付金あり
診断名
・腰部脊柱管狭窄症
・右変形性膝関節症
・右股関節痛
・末梢性神経障害性疼痛
・脂質異常症
・アルツハイマー型認知症
・鉄欠乏性貧血
・慢性胃炎
・気管支喘息
導入の背景
夫の死後も独居生活を継続していたが、転倒による骨盤骨折や体調不良を契機にADLが低下。外来通院が困難となり、入退院を経て自宅へ退院した。訪問看護導入後も受診継続は難しく、在宅生活を強く希望されたため、訪問診療へ切り替えた。多疾患を抱えるなかで、生活機能維持と安全性の確保が課題であった。
介入内容と経過
訪問診療開始後は大きな体調変動もなく、安定した在宅療養が継続できている。
医療処置は必要なく、以下を中心にサポートを実施した。
・服薬管理
・全身状態の定期モニタリング
・生活動線や住環境の調整
・生活習慣の助言と支援
長女が定期的に訪問し、日常的な困りごとへの対応や見守りを行うことで、自宅での生活が無理なく維持されている。
医療対応の詳細
主病:腰部脊柱管狭窄症、変形性膝関節症、神経障害性疼痛、認知症ほか
医療処置:特別な処置なし(服薬管理と経過観察が中心)
支援のポイント
・身体・認知機能に合わせた生活動線・環境調整を実施
・隣接市在住の長女との情報共有を継続し、変化に即応できる体制を構築
・医療負担を最小化し、定期訪問で急性増悪の予防と生活の安定を確保
・介護保険と福祉給付制度を活用し、生活の安定に寄与
考察
複数の慢性疾患と認知症を抱えつつも、医療処置を必要としない形で在宅療養を維持できた症例である。
安定を支えた要因は、
・本人の生活状況に合わせた支援設計
・家族との緊密な連携
・訪問診療による早期対応体制
である。
通院が困難になった時点で訪問診療へ移行することにより、本人の希望に沿った暮らしを継続できた点は、今後の支援方針を検討するうえでも重要な示唆となる。
付記情報
・診療科:内科、整形外科、その他
・病態・症状:認知症、その他
・世帯構成:独居