在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/12/11
慢性関節リウマチを抱える独居高齢者に対する在宅医療支援の事例
要点サマリー
慢性関節リウマチをはじめ複数の慢性疾患を抱える独居高齢者に対し、疼痛コントロールと感染症リスクのバランスを考慮しながら、訪問診療と外来通院を併用。医療・介護の多職種連携により在宅生活が継続できている事例。
基本情報
年齢・性別:83歳・女性
居住地:名古屋市瑞穂区
家族構成:独居。夫は施設入所中。長男は東京都、次男(キーパーソン)は市内在住。
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
介護保険:要介護3(1割負担)
福祉給付金資格者証あり
診断名
・慢性関節リウマチ
・シェーグレン症候群
・骨粗鬆症
・胸腰椎圧迫骨折
・脊椎側弯症
・子宮脱
導入の背景
本人は複数の慢性疾患による疼痛を抱え、日常生活に大きく影響していた。急性増悪として発熱と腹痛を主訴に救急搬送され腎盂腎炎と診断。尿路ステント留置後、リハビリ目的で転院となったが、基礎疾患である関節リウマチの治療方針は感染リスクとのバランスが課題となっていた。
積極治療による感染症リスク増加と、消極治療による疼痛・QOL低下というジレンマのなかで、家族の理解度と方針共有が重要であった。その点を退院前カンファレンスで丁寧に確認し、訪問診療導入となった。
介入内容と経過
訪問診療では、疼痛緩和、内服管理、感染徴候のモニタリングを中心に支援。外来リウマチ専門クリニックでの治療は継続しつつ、訪問側では全身状態変化の早期把握を担った。
疼痛コントロールはPSL(プレドニゾロン)やワントラムで対応。独居であるが、家族の定期的なサポートや多職種連携により、在宅生活を継続できている。
介入開始から1年以上経過し、途中入退院を挟みながらも安定した自宅療養が継続中。
医療対応の詳細
主病:慢性関節リウマチ、シェーグレン症候群、骨粗鬆症、胸腰椎圧迫骨折、脊椎側弯症、子宮脱
合併症:慢性疼痛、感染症反復
医療行為:膀胱留置カテーテル管理
薬剤:プレドニゾロン5mg、ワントラム 等
併診:リウマチ専門クリニックへの通院併用
支援のポイント
・リウマチ治療に伴うリスクとベネフィットを家族と丁寧に共有
・疼痛管理を最適化しながらQOL維持を図る
・独居環境を踏まえ、介護・医療の多職種によるアセスメントを継続
・必要に応じて入退院を組み合わせ、在宅療養をベースに柔軟に支援
考察
慢性関節リウマチのように治療方針の判断が難しい疾患では、医学的判断だけでなく、家族との十分な合意形成が在宅療養の成否を大きく左右する。本症例は、感染症リスク・疼痛・生活の質という複数の課題に対し、訪問診療と外来を組み合わせた多面的支援によって在宅生活を継続できている点が特徴的である。
在宅療養の継続には、疾患管理だけでなく、生活背景・介護力・家族の理解を含めた包括的アプローチが不可欠である。
付記情報
・診療科:内科、整形外科、その他
・病態・症状:関節リウマチ、慢性疼痛、その他
・世帯構成:独居