在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/12/10
パーキンソン病患者における「訪問診療+外来併診」による在宅生活支援の実践事例
要点サマリー
神経内科外来に通院中のパーキンソン病患者に対し、訪問診療を併診導入。
外来では十分に行えなかった生活面・服薬面の相談を在宅で補完し、医師間連携を通じて薬物調整への不安を軽減。
24時間相談体制と多職種連携を確立し、介護不安の軽減と在宅生活の安定化を実現した。
基本情報
利用者:75歳 男性
居住地:名古屋市名東区
世帯:妻と二人暮らし
要介護1
パーキンソン病 YahrⅢ、レビー小体型認知症
保険・福祉情報
後期高齢者医療保険(1割負担)
特定医療費受給者証(上限負担:5,000円)
介護保険:要介護1
診断名
パーキンソン病(YahrⅢ)
レビー小体型認知症
導入の背景
神経内科外来に定期通院していたが、受診間隔が長く、診察時間も限られており、妻は「ゆっくり相談できない」「薬がこのままでよいのか不安」「幻覚様症状への対応に困っている」「気軽な相談先がない」と悩みを抱えていた。
生活のしづらさや認知症症状への対応に不安が増す中、ケアマネジャーより当院へ相談が入り、通院継続を前提に、訪問診療を併用する「併診体制」を提案。
医療費が現状とほぼ変わらないこと、主治医との情報共有で外来治療が継続可能であることを説明し、同意を得て導入となった。
介入内容と経過
訪問診療開始後、在宅で十分な診察時間を確保できるようになり、生活状況・認知症状・服薬状況について詳細なヒアリングと評価を実施。
幻覚様症状や不安の背景を共有し、必要に応じて外来担当医へフィードバック。
さらに訪問看護(医療保険)を導入し、定期的な観察と生活支援を開始。
妻の不安は次第に軽減し、介護負担感の無理なく在宅生活が安定。
介入後は本人の症状も落ち着き、精神的な安定が得られている。
医療対応の詳細
・在宅定期診察による神経症状・生活機能の評価
・外来主治医への情報共有・処方調整連携
・幻覚・認知症症状への助言、介護指導
・訪問看護導入による日常観察の補完
・24時間相談体制により急変時の不安軽減
支援のポイント
・通院診療と在宅診療の併診モデル構築
・服薬調整の不安を医師間連携で解消
・医療・看護・ケアマネの連携による包括的支援
・主介護者への定期的な心理的サポート
・いつでも相談できる体制整備
考察
パーキンソン病は進行に応じて薬物療法の調整や生活支援が不可欠となり、外来診療のみでは対応が難しい場面が多い。
訪問診療を併診することで、生活環境を踏まえた評価や十分なコミュニケーションが可能となり、治療への納得度と継続性を高めることができた。
特に、介護者の不安軽減と早期介入は、在宅生活の維持において極めて重要である。
病院医師との緊密な情報共有により、診療の一貫性を保ったまま支援を深められた点は、本症例の大きな成果である。
付記情報
・診療科:内科、精神科、その他
・病態・症状:パーキンソン病、認知症
・世帯構成:夫婦のみ