在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/12/10
パーキンソン病(YahrⅢ)高齢女性 家族介護負担を軽減し在宅生活を維持した事例
要点サマリー
パーキンソン病の進行により通院が困難となり訪問診療を導入。
帯状疱疹発症による一時的なADL低下をショートステイ活用により乗り越えた。
服薬管理の一包化および多職種連携の強化により、在宅生活の継続と主介護者の負担軽減を実現した。
基本情報
利用者:88歳 女性
居住地:名古屋市
要介護4
パーキンソン病(YahrⅢ)、認知症なし
保険・福祉情報
後期高齢者医療
介護保険:要介護4
診断名
パーキンソン病(YahrⅢ)
帯状疱疹(経過中)
導入の背景
数年来よりパーキンソン症状が徐々に進行し、身体機能が低下していた。
感染症流行により外出機会が減少したことも影響し、ADLはさらに低下。
主介護者である長女の介護負担が増大し、肘の痛みも出現したことで通院介助が困難となった。屋外移動は車いすで、長女の支援なしには通院が不可能な状況となったため、訪問診療導入に至った。
介入内容と経過
訪問診療開始後、帯状疱疹を発症し、疼痛とADLの一時的低下を認めた。
入院を検討したが身体状況を踏まえて入院対応が困難と判断され、急遽ショートステイを調整・利用した。
帯状疱疹は改善傾向となり、自宅復帰後はADLも発症前とほぼ同程度まで回復した。
パーキンソン病による起立性低血圧や動作緩慢の訴えは継続したが、顕著な進行は認めなかった。
医療対応の詳細
本人判断による内服中断や服薬抜けが頻発していたため、病状安定と治療継続を目的に十分な説明を行い同意を得た上で、一包化処方へ切り替えた。
これにより服薬管理が安定し、排便コントロールも改善した。
介護サービスは段階的に再編し、以下の体制を構築した。
・デイサービス:週1回 → 週2回へ増回
・訪問リハビリ継続
・訪問看護継続
・訪問マッサージ導入
多職種連携により、生活機能維持と介護負担軽減の両立を図った。
支援のポイント
入院不可判断に対し、迅速にショートステイを調整し療養継続を支援した。
服薬自己中断の背景をアセスメントし、一包化処方へ切り替えることで内服管理を安定化させた。
主介護者の負担軽減を最優先に、在宅サービス量・内容を再設計した。
医療と介護の役割分担を明確化し、チーム支援体制を構築した。
考察
在宅生活継続には疾患管理のみならず、介護者負担の評価と適切な支援調整が不可欠である。
本症例では、入院方針変更への迅速対応、服薬管理体制の再構築、サービス調整により、本人および家族双方の不安や負担を軽減することができた。
在宅療養を支えるには、症状増悪時の「緩衝装置」となる短期入所調整、日常管理の徹底、そして多職種連携の即応性が重要である。
付記情報
診療科:内科、緩和ケア科、その他
病態・症状:パーキンソン病、その他
世帯構成:親子