在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/12/09
抗がん剤治療中の造血腫瘍患者に対し、在宅輸血を併用して自宅療養を継続したケース
要点サマリー
造血腫瘍再発により抗がん剤治療を受ける中、感染症や進行性貧血により入院継続の負担が増大していた。
本人の強い在宅希望を受け、訪問看護と連携して在宅輸血体制を構築し、自宅療養への移行を実現した。
訪問診療・訪問看護が一体となることで、副作用リスクを管理しながら、病院同等の治療継続が可能となった。
基本情報
年齢・性別:60歳
居住エリア:記載なし
家族構成:子どもと二人暮らし
保険・福祉情報
記載なし
診断名
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造血腫瘍(再発)
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貧血
導入の背景
造血腫瘍に対し抗がん剤治療を実施するも再発を認め、再治療が開始された。
治療経過中、感染症を併発し入院下で抗生剤治療を実施。あわせて腫瘍による貧血悪化により、輸血を要する状態となった。
長期に及ぶ入院・治療による身体的・精神的負担が増大し、本人より自宅退院の希望が強く示された。
退院前合同カンファレンスにて、在宅での輸血実施も含めた支援体制構築を検討し、訪問診療導入が決定された。
介入内容と経過
在宅輸血実施に際し、副作用発現時の迅速対応が不可欠であることから、輸血経験のある訪問看護ステーションとの連携を構築。
事前に訪問看護師による自宅採血を行い、検査結果をもとに必要量の輸血を訪問診療日に合わせ準備する運用とした。
退院後採血にて貧血進行を認めたため、計画通り在宅輸血を実施。
訪問看護師と密に連携し、有害事象に即時対応できる体制を整えた結果、副作用なく安全に輸血を継続できている。
医療対応の詳細
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定期訪問診療による全身状態評価
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事前採血による輸血適応判断
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在宅輸血実施および副作用管理
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訪問看護常時連携体制の構築
支援のポイント
・輸血という高度医療行為も、訪問看護との役割分担により在宅で安全に実施可能であった。
・事前採血・準備・当日対応のオペレーションを明確化することで医療事故リスクを最小化できた。
・在宅移行によって患者本人のQOLが大きく向上した。
考察
本症例は、「在宅医療では通常できないと捉えられがちな医療行為」についても、多職種連携を徹底することで実現できることを示す事例である。
訪問診療と訪問看護が役割を明確化し、事前準備・安全管理体制を整えることにより、輸血という病院レベルの医療行為を在宅で継続することが可能となった。
患者主体の療養環境整備には、医療技術だけでなく、運用設計とチーム連携の質が不可欠であることを改めて示唆する事例である。
付記情報
診療科:緩和ケア科、その他
病態・症状:がん
世帯構成:親子