在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/12/03
多発転移を伴う直腸がんに対し、併診体制を整えて在宅療養を開始したケース
要点サマリー
多発転移を伴う進行直腸がんで予後が限られる中、自宅退院と在宅療養を本人・家族が希望したケースである。
点滴管理を含む医療体制構築と、前医との併診を継続する形で安心感を確保した。
訪問診療と外来併診を組み合わせ、在宅での生活継続と症状コントロールを支援した。
基本情報
年齢・性別:82歳 女性
居住エリア:名古屋市千種区
家族構成(KP):夫・次女・孫との4人暮らし(KP:家族全体で支援、長女は県外)
医療保険・介護保険:後期高齢者医療1割、福祉給付金資格者証、要介護4
主病・背景
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直腸がん
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多発肝転移
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肺転移
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リンパ節転移
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脾転移
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肋骨転移
生活背景:
家族と同居し、在宅療養を継続したいという本人・家族の意向が強かった。一方で、長年受診してきた前医との関係が途切れることへの不安を抱えていた。
訪問診療導入の経緯
循環器内科および消化器外科に通院中、直腸がん原発の多発転移と診断され、予後はおおむね半年と説明を受けた。
せん妄により入院となり、その後、吐き気と食事量低下が出現したが、画像上明確な原因病変は認められなかった。
本人・家族は自宅退院を希望し、点滴など在宅での医療対応が必要となったため訪問診療導入を決定した。
主治医はBSC方針であったが、本人・家族が通院継続を希望したため、当院から前医へ併診を提案し了承を得たうえで、訪問診療と外来併診の体制を構築した。
介入内容と経過
診療方針:在宅療養を基本とし、症状緩和と栄養・水分管理を行いながら、前医との併診により安心感を確保する。
医療介入:
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PICC留置による輸液管理(エルネオパ1000mL/日)
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吐き気・全身状態のモニタリングと薬剤調整
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緩和的医療対応
多職種連携:
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訪問看護と連携した点滴管理・状態観察
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当院と前医との診療情報共有による併診体制維持
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家族への継続的な説明と支援
生活支援・環境調整:
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在宅点滴環境の整備
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家族の介護負担を考慮した支援導線の調整
経過・結果:
訪問診療導入後は、併診体制のもとで在宅療養を開始。点滴管理により脱水や栄養低下への対応を行いつつ、症状に応じた緩和ケアを実施し、自宅での生活継続を支えている。
支援のポイント
・在宅療養希望と「前医とのつながりを維持したい」という心理的ニーズの双方を尊重し、併診という選択肢を提示した。
・点滴管理を含む医療体制を構築し、自宅退院の障壁を下げた。
・訪問看護・前医・家族との情報共有を密に行い、在宅での安心感を担保した。
付記情報
疾患種別:悪性腫瘍/終末期
関連病名:直腸がん、多発肝転移、肺転移、リンパ節転移、脾転移、肋骨転移
医療処置:PICC留置、輸液管理(エルネオパ1000mL/日)
エリア:名古屋市千種区
生活環境:夫・次女・孫と同居(長女は県外)
介護者状況:家族介護体制あり
医療負担割合:1割