在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/12/03
認知症の進行により通院継続が困難となり、経済的支援調整を含めて在宅療養へ移行したケース
要点サマリー
認知症の進行と多疾患併存により通院が困難となった高齢男性に対し、家族の希望により訪問診療を導入したケースである。
開始に際しては医療費負担が課題であったが、公費医療制度(丸福)の活用可能性を確認しながら介入を進めた。
医療支援だけでなく制度調整を含めた支援構造により、在宅療養体制の構築につながった。
基本情報
年齢・性別:89歳 男性
居住エリア:名古屋市瑞穂区
家族構成(KP):長男夫婦と孫2人との5人暮らし(KP:長男)
医療保険・介護保険:後期高齢者医療1割、要介護2(1割)
主病・背景
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高血圧症
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脳出血後遺症
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高脂血症
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アレルギー性鼻炎
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アルツハイマー型認知症
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前立腺肥大症
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大動脈周囲リンパ節転移
生活背景:
85歳頃まで就労していたが、退職後に物忘れが出現し徐々に認知症症状が進行。冬頃から症状が急速に悪化し、介護認定を受け要介護2となった。
訪問診療導入の経緯
近隣クリニックへの通院を継続していたが、認知症の進行により通院が困難となった。
家族より訪問診療の希望があったが、医療費負担についての説明を行ったところ、経済的な理由から導入を躊躇される状況があった。
相談員を通じて丸福取得の可能性について医師へ相談し、診察を行えば取得見込みがあると判断されたため、まずは訪問診療を開始し、取得が難しい場合は中止する方針で家族と合意した。
開始後、実際に丸福の取得ができ、訪問診療を継続する体制が整った。
介入内容と経過
診療方針:通院困難に対する在宅医療体制の確立と、認知症進行に伴う生活支援の調整を目的とする。
医療介入:
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慢性疾患の内服管理
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認知症症状のモニタリング
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全身状態の定期評価
多職種連携:
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ケアマネを中心とした制度利用支援
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相談員との連携による公費医療制度調整
生活支援・環境調整:
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家族への介護指導
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見守り体制の整理
経過・結果:
訪問診療導入後、公費医療制度(丸福)の取得が完了。
医療的支援と制度調整が一体化した支援体制により、在宅療養の継続が可能となっている。
支援のポイント
・医療介入と併せて、経済的課題を早期に把握し制度調整を行った点が重要であった。
・「まず診察を開始して制度取得を検証する」という柔軟な導入設計により、支援機会を逸さずに済んだ。
・相談員・医師・ケアマネの連携により、医療と福祉を一体で支えた。
付記情報
疾患種別:脳血管障害後遺症/生活習慣病/認知症/腫瘍関連疾患
関連病名:高血圧、脳出血後遺症、高脂血症、アレルギー性鼻炎、アルツハイマー型認知症、前立腺肥大症、大動脈周囲リンパ節転移
エリア:名古屋市瑞穂区
生活環境:長男夫婦・孫との同居
介護者状況:KPは長男、公的支援と家族介護併用
医療負担割合:1割(後期高齢者医療)、1割(介護保険)