在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/11/27
原発性肺がんと癌性胸膜炎に対し、緩和方針で在宅療養へ移行したケース
要点サマリー
肺がんに伴う疼痛・胸水管理のため入院治療を受けたが、胸膜癒着術後は状態が安定し、緩和ケア方針で訪問診療が導入された。
オピオイド管理により疼痛は良好にコントロールされ、自宅療養への移行がスムーズに行えた。
認知症や脳梗塞の既往がある中で、家族支援と多職種連携により在宅での生活を整えた。
基本情報
年齢・性別:87歳 女性
居住エリア:名古屋市千種区
家族構成(KP):夫、長男と同居/KPは近隣在住の長女
医療保険・介護保険:後期高齢者医療1割、要介護3(1割)
主病・背景
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左原発性肺がん
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癌性胸膜炎
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胸膜癒着術後
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脳梗塞・認知症
生活背景:
疼痛やADL低下を抱えつつも、自宅で家族と過ごすことが重要であり、緩和ケアを目的に在宅療養へ移行した。
訪問診療導入の経緯
脳梗塞と認知症でクリニック通院中であった。
2021年11月頃に左肩痛が出現し、近医整形外科でMRIの結果、左肺尖部腫瘤を確認。A病院紹介となり左上葉原発性肺がんと診断。
疼痛緩和目的で放射線治療を施行し、その後オピオイド導入で疼痛コントロールは良好。
2022年5月〜6月に胸水増加のため入院し、胸腔ドレナージと胸膜癒着術を施行。胸水は安定した。
BSC(Best Supportive Care)の方針となり、訪問診療依頼があり当院介入となった。
介入内容と経過
診療方針:緩和ケアを中心に、自宅での生活の安定と苦痛の最小化を図る。
医療介入:
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オピオイドによる疼痛管理
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呼吸状態の観察
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癌性胸膜炎後の胸部症状のモニタリング
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仙骨部褥瘡の処置
多職種連携:
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訪問看護との連携強化
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家族への療養説明
生活支援・環境調整:
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痛みによるADL制限への対応
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家族介護負担の軽減支援
経過・結果:
訪問導入後は疼痛コントロールが維持され、自宅での療養が可能となった。
緩和的な介入を継続し、家族と自宅で過ごす時間を重視した支援を行った。
支援のポイント
・疼痛コントロールが安定していたことが在宅移行の鍵となった。
・胸膜癒着後の呼吸状態フォローを行い、症状安定を確認しながら在宅療養を継続した。
・認知症の影響も踏まえ、家族サポート体制の強化が重要であった。
付記情報
疾患種別:悪性腫瘍/終末期
関連病名:左原発性肺がん、癌性胸膜炎、胸膜癒着術後
医療処置:仙骨褥瘡処置
エリア:名古屋市千種区
生活環境:夫・長男と同居、長女がKP
介護者状況:家族介護体制あり
医療負担割合:1割