在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/11/10
認知症の進行と帯状疱疹後のADL低下により通院困難となり、訪問診療へ移行したケース
要点サマリー
転倒増加と帯状疱疹を契機にADLが急速に低下し、認知症症状の悪化も重なり通院が困難となった患者である。
家族には日常のケア負担が増大し、かかりつけ医不在の状態であったため訪問診療を導入した。
身体症状と認知症症状の双方に対し、在宅での継続的な医療支援が求められた。
基本情報
年齢・性別:91歳 女性
居住エリア:名古屋市中区
家族構成(KP):本人・長男・長男妻の三人暮らし(娘2名は北区・稲沢市)
医療保険・介護保険:後期高齢者医療1割、要介護2(1割)
主病・背景
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アルツハイマー型認知症
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帯状疱疹
生活背景:
転倒頻発、帯状疱疹痛、認知症症状の悪化により自力行動が困難。家族介護負担が増大していた。
訪問診療導入の経緯
2022年7月半ば頃から転倒が増え、入浴を避けるようになり、家族が確認したところ「針で刺すような痛み」を訴えていた。
その後、自力移動困難となり、Aクリニックの紹介で皮膚科を受診し帯状疱疹と診断。軟膏処方のみに留まり治療は短期間で終了した。
同時期より、認知症の診断歴はないものの、幻視・幻聴・妄想・昼夜逆転・抑うつ・記憶障害などが顕著にみられ、数年来の友人死別を契機に症状悪化が認められていた。
右乳頭陥没・乳房変形があり8月初旬にB病院乳腺科で精査したところ、悪性ではなく脂肪壊死と診断。
右膝痛もあり通院困難となり、かかりつけ医不在で家族の不安が強かったため、訪問診療導入の相談があり、2022年8月末より介入となった。
介入内容と経過
診療方針:身体症状と認知症症状の双方に対応し、通院困難な状況でも在宅での安心できる医療提供を行う。
医療介入:
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帯状疱疹痛の管理
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膝痛の評価と疼痛管理
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認知症症状の観察と生活支援
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転倒リスク評価と環境調整
多職種連携:
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訪問看護との連携による日常観察
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家族への認知症ケアの助言
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必要時の専門科受診調整
生活支援・環境調整:
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入浴・移動等の日常動作サポートの助言
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家族介護負担の軽減策の提案
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生活リズムの調整支援
経過・結果:
在宅での帯状疱疹痛の管理と認知症症状のフォローを行いながら、家族とともに生活を整えた。
通院困難な状況でも、必要な医療支援を訪問体制で確保できた。
支援のポイント
・身体症状(帯状疱疹痛・膝痛)と認知症症状の複合的な影響に対し、双方を並行して支援する必要があった。
・家族が不安を抱えやすい状況であり、医療面とケア面の両方で継続的な伴走支援が重要であった。
・再転倒予防と生活環境改善が在宅療養継続に直結した。
付記情報
疾患種別:認知症/皮膚疾患/整形外科合併症
関連病名:アルツハイマー型認知症、帯状疱疹
エリア:名古屋市中区
生活環境:長男夫婦との三人暮らし
介護者状況:長男・長男妻が主介護
医療負担割合:1割(医療・介護)