在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/10/28
化学療法中断後の在宅移行において疼痛緩和と意思決定支援を行った末期がんのケース
要点サマリー
切除不能の盲腸癌に対し化学療法を継続していたが、腫瘍穿孔に伴う手術後に間質性肺炎を併発し、ADLが低下したため在宅療養へ移行した事例である。人工肛門管理やCVポートの維持を行いながら、がん性疼痛に対する緩和ケアを進めた。急速な病状進行に伴いBSC(Best Supportive Care)へ移行し、ご家族とともに短期間の在宅看取り準備を行った。
基本情報
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年齢・性別:71歳・男性
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居住エリア:名古屋市千種区
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家族構成:妻・長女・孫との4人暮らし(同居)
保険・福祉情報
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後期高齢者医療保険:2割負担
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介護保険:要介護5・1割負担
診断名
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盲腸癌(切除不能)
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肺転移・肝転移
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術後間質性肺炎
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がん性疼痛
導入の背景
2021年3月より切除不能盲腸癌に対して化学療法を行っていたが、2023年5月に腫瘍穿孔により回盲部切除・人工肛門造設術を実施。術後に間質性肺炎が悪化したがステロイドパルス療法により呼吸状態は改善。しかしADLが低下し、通院負担および在宅管理の必要性から訪問診療導入となった。
介入内容と経過
退院後より訪問診療にてストーマ管理・CVポート管理・訪問リハビリ導入を支援。7月後半より腹部・体幹部を中心にがん性疼痛が増悪しオピオイド管理を開始。主治医より予後3か月と説明され、化学療法再開は困難と判断されBSC方針へ移行。8月には食欲低下と咽頭痛が出現し、経口摂取量が減少。急速に全身状態が悪化し、終末期せん妄も認められるようになった。家族同席のもと予後2週間~1か月の見通しを共有し、在宅看取りの準備を進めた。8月27日、自宅にて家族に見守られながら永眠。
医療対応の詳細
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人工肛門管理(ストーマ)
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CVポート管理
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オピオイドによる疼痛緩和
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食思不振・内服困難への対応
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予後共有と意思決定支援
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在宅看取り支援
支援のポイント
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化学療法からBSCへの移行期における家族支援と説明の一貫性が重要
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人工肛門やCVポートを含む医療依存度の高い在宅支援の体制構築が鍵
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病状進行が速い悪性腫瘍では、早期に在宅看取りの選択肢を提示する必要がある
考察
がん終末期の在宅移行支援では、「治療継続の希望」と「現実的な生活支援や疼痛管理」のバランス形成が求められる。本例は人工肛門管理など医療的課題を抱えながらも、方針共有と疼痛管理により在宅看取りを実現できたケースであり、悪性腫瘍の在宅支援におけるチーム連携モデルの一例といえる。
付記情報
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疾患種別:悪性腫瘍(消化器がん)
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病名:盲腸癌・肺転移・肝転移
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医療処置:ストーマ・CVポート
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エリア:名古屋市千種区
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生活環境:家族同居
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医療負担割合:2割
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専門医介入:消化器外科・腫瘍内科
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公費負担医療:該当なし
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障害者手帳・認定情報:該当なし