在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/10/28
骨髄異形成症候群の終末期において輸血方針を調整しながら在宅移行を試みた支援
要点サマリー
骨髄異形成症候群/骨髄増殖性腫瘍に伴う輸血依存状態の患者であり、通院継続が困難となったことから在宅医療へ移行した。疾患進行に伴い輸血頻度が増加し、治療目的よりも症状緩和の意義が中心となる段階であったが、家族の不安が強く、輸血方針の意思決定支援が必要となった。最終的には急変により再入院し逝去されたが、在宅療養への移行支援と家族支援の両立が求められる典型例であった。
基本情報
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年齢・性別:88歳・男性
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居住エリア:名古屋市東区
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家族構成:妻との二人暮らし。子は他県在住で支援は限定的。
保険・福祉情報
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後期高齢者医療保険:1割負担
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介護保険:要介護2・1割負担
診断名
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骨髄異形成症候群/骨髄増殖性腫瘍(MDS/MPN)
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脾腫
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高血圧症
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高尿酸血症
導入の背景
長期間にわたり血液内科へ通院し、2週間ごとに赤血球・血小板輸血を受けていた。感染症(重症蜂窩織炎)で入院した後、再度自宅生活へ戻ったが、疾患進行に伴い通院負担が増大。末梢血に芽球が出現するなど病勢悪化が明らかとなり、在宅療養への移行を目的に訪問診療導入の相談となった。
介入内容と経過
自宅初診を実施したが、翌日にめまいを訴え家族が救急搬送を希望。血液検査で病勢進行が確認され、そのまま再入院となった。入院後も急速に病状は進行し、治療適応は限られ緩和目的の輸血管理となったが、入院中に逝去となった。在宅医療は準備段階に留まり短期間の介入となった。
医療対応の詳細
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進行性血液疾患に対する輸血方針の検討
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全身状態に応じたハイドレア内服下での血液管理
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在宅移行準備と急変時対応
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家族との情報共有と意思決定支援
支援のポイント
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MDS/MPNの進行例では、治療の意義と限界の共通理解が不可欠
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「輸血ありき」ではなく「目的の共有」が重要
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妻以外の家族支援が不安定であり、在宅療養実現には多職種連携が必須
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初期段階での予後共有が在宅移行支援の質を左右する
考察
造血器腫瘍の在宅医療では、予後予測の難しさと家族の不安の強さにどう対応するかが課題となる。通院継続が困難となった時点で早期に在宅医療へ移行し、輸血の適応・頻度・目的を明確にしておくことが望ましい。本例のように、急変リスクを踏まえた具体的な方針設計が重要である。
付記情報
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疾患種別:血液疾患(造血器腫瘍)
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病名:骨髄異形成症候群/骨髄増殖性腫瘍
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医療処置:輸血
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エリア:名古屋市東区
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生活環境:妻との二人暮らし・家族支援不安定
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医療負担割合:1割
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専門医介入:血液内科
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公費負担医療:なし
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障害者手帳・認定情報:該当なし