在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/10/28
高齢終末期に対し家族意向を調整しながら輸血対応を継続した在宅支援
要点サマリー
高齢終末期の汎血球減少症に対し、本人は自宅療養を希望し、家族は輸血継続を強く希望していた。医学的には輸血適応が限定的であることを説明しながら、本人負担と治療リスクのバランスをとり、在宅で可能な範囲で輸血対応を継続した。在宅看取りを実現するために、治療限界の共有と家族支援が重要となったケースである。
基本情報
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年齢・性別:93歳・女性
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居住エリア:名古屋市瑞穂区
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家族構成:本人・長男の二人暮らし(長女は別居)
保険・福祉情報
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後期高齢者医療保険:1割負担
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介護保険:要介護4・2割負担
診断名
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汎血球減少症
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気管支肺炎
導入の背景
汎血球減少に対し入院下で輸血治療を繰り返していたが、度重なる通院や入退院が負担となり、自宅での療養を希望するに至った。発熱で救急搬送された際に気管支肺炎を合併したが、治療後に退院。家族は在宅療養を強く希望したため訪問診療を導入した。
介入内容と経過
訪問診療開始後、輸血は対症療法であり高齢者では効果が限定的であることやリスクを説明したが、長男は可能な範囲での継続を希望。月1回・RCC2単位までと方針を定め在宅で輸血管理を開始した。やがて発熱が頻回となり全身状態が低下。輸血効果が乏しくなり限界を迎えたことを家族に説明し、終末期対応へ方針転換した。2022年11月、自宅で家族に見守られながら永眠した。
医療対応の詳細
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在宅下で必要時の輸血対応
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終末期の意思決定支援
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感染症リスク管理と状態観察
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家族への医療的説明と心理的支援
支援のポイント
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「何を優先するか」を家族と話し合い意思決定を反復
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輸血の医学的限界を丁寧に共有し理解形成を促進
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治療中止のタイミングを見失わないよう予後予測を提示
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本人の希望(自宅看取り)を最終的に尊重し実現
考察
本事例は、治療継続を望む家族と負担軽減を求める本人希望の間で、医療者がどの方向性を支えるべきか悩む典型例である。「輸血という医療行為そのものを続けるかどうか」ではなく、「何のために医療を行うのか」という目的共有が重要であり、在宅医療における家族支援の重要性を示す事例である。
付記情報
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疾患種別:血液疾患・終末期
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病名:汎血球減少症、気管支肺炎
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医療処置:輸血
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エリア:名古屋市瑞穂区
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生活環境:同居家族あり(長男)
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医療負担割合:1割
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専門医介入:なし
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公費負担医療:なし
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障害者手帳・認定情報:該当なし