在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/10/24
誤嚥性肺炎の再燃を背景に家族の意思を尊重して在宅看取りへ移行した事例
要点サマリー
高齢終末期に繰り返す誤嚥性肺炎を背景に、入院加療から自宅看取りへ移行した事例である。家族は延命目的の治療を望まず、「最期は住み慣れた自宅で」という意向を明確にしていたため、訪問診療と訪問看護が連携し在宅療養体制を整備した。症状緩和と家族支援を両立し、短期間であっても穏やかな在宅看取りを実現した点に特徴がある。
基本情報
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年齢・性別:80歳・男性
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居住エリア:名古屋市東区
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家族構成:妻・長女・孫二人との同居、長男は豊田市在住
保険・福祉情報
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後期高齢者医療保険:1割負担
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介護保険:要介護3(1割負担)
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福祉給付金資格者証あり
診断名
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誤嚥性肺炎
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胃癌術後
導入の背景
急性期病院で誤嚥性肺炎の治療を受け、一時回復したものの再燃を認め、老衰の進行と感染再発リスクが高い状態であった。入院継続による治療選択も可能であったが、家族は延命治療の継続を望まず、苦痛緩和を優先し自宅で看取りたいと希望した。これを受け、病院から在宅医療への早期切り替えの方針が決定し、当院への訪問診療依頼となった。
介入内容と経過
在宅移行後は身体状況を考慮し、過度な医療介入は行わず、症状緩和と生活支援のバランスを重視した対応を継続した。訪問看護と家族でのケア体制を整備し、呼吸苦への対応として在宅酸素療法を導入した。経過中に容体は徐々に低下したが、苦痛コントロールは保たれ、介入開始から約1週間で家族に見守られながら自宅で穏やかに永眠された。
医療対応の詳細
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症状緩和を目的とした訪問診療
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呼吸苦に対する在宅酸素療法導入
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家族への看取り支援と意思決定支援
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24時間連絡体制による訪問看護連携
支援のポイント
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家族の意向(延命拒否・自宅看取り希望)を早期に共有し方針を明確化
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病院からの退院支援と在宅移行をタイムロスなく連携
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「治療」から「緩和・看取り」への移行支援を丁寧に実施
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家族の不安軽減のため予後予測と状態変化の見通しを適切に共有
考察
本事例は、誤嚥性肺炎の再燃を契機に終末期を迎えた高齢者に対し、急性期から在宅医療へのスムーズな移行が看取りの質を高めることを示している。家族の価値観を尊重した意思決定支援と、早期の在宅支援体制構築が、自宅看取りの実現に不可欠である。
付記情報
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疾患種別:終末期・感染症
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病名:誤嚥性肺炎、胃癌術後
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医療処置:在宅酸素療法
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エリア:名古屋市東区
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生活環境:家族同居
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医療負担割合:1割
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専門医介入:該当なし
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公費負担医療:福祉給付金
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障害者手帳・認定情報:該当なし