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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/10/24

精神症状の不安定さと地域との孤立を抱える独居高齢者への訪問診療支援

要点サマリー

長年統合失調症の精神症状と左不全麻痺を抱える独居女性に対し、通院困難と地域からの孤立を背景に訪問診療を導入した事例である。病識に乏しく支援拒否傾向もあったが、行政・地域包括支援センター・ケアマネジャーと連携し、継続的な医療介入と生活支援体制を整備したことで在宅療養を維持できている。本事例は精神疾患を背景に孤立しやすい高齢者への支援には「医療・福祉連携の継続性」「信頼関係構築に時間をかける姿勢」が重要であることを示している。

基本情報

  • 年齢・性別:85歳・女性

  • 居住エリア:名古屋市北区

  • 家族構成:本人独居(長男は別居)

保険・福祉情報

  • 後期高齢者医療保険:1割負担

  • 介護保険:要介護1(1割負担)

  • その他:福祉サービス利用歴あり

診断名

  • 統合失調症

  • 脳梗塞後遺症(左不全麻痺)

導入の背景

脳梗塞の既往がありADLは部分的に低下していたが、長年通院は自己管理で継続していた。夫による代理受診で治療継続していたが、夫の入院・死亡を機に精神症状が悪化し、幻覚・妄想・被害的言動が顕著となり地域との関係性が悪化。家族による支援が期待できず、社会的孤立と通院困難が深刻化したため、地域包括支援センターから訪問診療導入の依頼となった。

介入内容と経過

訪問診療開始当初は支援全般に拒否的であり、医療者に対する不信もみられた。初期介入では急性増悪の回避と関係構築を最優先とし、服薬継続支援と精神状態の安定化を図った。訪問看護を導入し、生活リズムの改善や服薬管理のサポートを段階的に実施したことで、支援受け入れが徐々に可能となり安定した在宅療養環境を維持できている。

医療対応の詳細

  • 服薬調整と服薬管理支援

  • 精神状態のモニタリング

  • 緊急連絡体制の整備(包括支援センター・訪問看護との連携)

支援のポイント

  • 家族支援が期待できない事例では地域包括支援センター・ケアマネとの連携が必須

  • 精神症状による支援拒否があっても即時対応より信頼関係の形成を優先

  • 医療と福祉の多職種連携で孤立を防止する体制づくりが重要

考察

本事例は、精神疾患を背景に支援拒否が強い高齢者への在宅支援の難しさを示すと同時に、**「関係性を切らない支援」**の重要性を示している。訪問診療が継続の土台となり、地域支援が連動することで、独居・精神疾患・認知機能低下を抱える患者においても在宅療養の継続が可能となる。

付記情報

  • 疾患種別:精神疾患/脳血管疾患

  • 病名:統合失調症、脳梗塞後遺症

  • 医療処置:特になし

  • エリア:名古屋市北区

  • 生活環境:独居・地域とのつながり希薄

  • 医療負担割合:1割

  • 専門医介入:精神科連携

  • 公費負担医療:該当なし

  • 障害者手帳・認定情報:該当なし