在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/10/24
多発骨折と廃用を背景に在宅療養へ移行し、家族介護と連携して看取りまで支援した高齢患者のケース
要点サマリー
98歳男性。転倒を契機に両側大腿骨転子部骨折を続けて発症し、長期入院により廃用症候群が進行。嚥下機能低下や膀胱炎の反復により医療依存度が高まっていたが、長男家族の強い希望により在宅移行となった。訪問診療導入後は経口摂取再開や点滴離脱など一時的に改善を認めるも、誤嚥性肺炎を発症。在宅酸素療法を導入し方針を看取りへ切り替えた。家族意思の明確化と連携体制を構築することで、自宅で最期を迎える支援が可能となった事例である。
基本情報
98歳・男性
名古屋市千種区在住
家族構成:長男・長男の妻と同居/次男・長女は別居
キーパーソン:長男
保険・福祉情報
後期高齢者医療保険:1割
介護保険:要介護5(1割)
主病
・左大腿骨転子部骨折(骨接合術後)
・右大腿骨転子部骨折(骨接合術後)
・骨粗鬆症
・認知症/廃用症候群
・狭心症
・膀胱炎反復
訪問診療開始の経緯
日中独居で生活していたが、2021年12月にデイサービス中に転倒し右大腿骨転子部骨折。その後リハビリ転院を経て長男宅へ退院した当日に再転倒し左大腿骨転子部骨折を発症。再手術後の入院中に廃用が進行し、経口摂取困難・吸引・点滴管理が必要な状態となった。長男夫婦は自宅介護を希望し、退院にあわせて訪問診療が導入された。
介入内容と経過
退院直後は点滴継続や吸引が必要な状態であったが、在宅移行後に経口摂取が再開され徐々に点滴は減量。しかし4月15日に容態悪化し誤嚥性肺炎で緊急入院。褥瘡処置などを行い5月6日に再自宅退院となった。家族はこの時点で「看取りの覚悟」を持つに至り、6月には在宅酸素療法を導入。多職種連携により在宅での症状緩和と家族支援を継続し、6月27日、家族に見守られ自宅で永眠された。
医療処置
・褥瘡処置
・在宅点滴管理
・痰吸引
・在宅酸素療法(HOT)
付記情報
疾患種別:整形外科疾患/廃用症候群/高齢多疾患
エリア:名古屋市千種区
生活環境:家族介護(長男・長男嫁)
支援上の課題:転倒再発予防/嚥下低下対応/誤嚥性肺炎予防
キーワード:在宅移行/看取り支援/家族意思決定支援/医療介護連携