在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/10/24
摂食拒否と脱水を背景に在宅移行した認知症高齢者に対し、胃瘻造設と経口摂取再開を両立した支援
要点サマリー
認知症の進行に伴い食事・水分摂取拒否が顕著となり、脱水・高Na血症で入院した高齢女性の事例である。経鼻胃管や点滴のみでは在宅療養の継続が困難であったが、家族と方針を丁寧に検討し胃瘻造設に移行。拒否・抵抗が強い認知症患者でも、家族支援と医療・介護の連携により栄養管理を安定化させ、在宅療養を一年以上継続している。医療処置を伴う在宅支援では「家族教育」「リスク管理」「多職種連携」が重要となることを示す内容である。
基本情報
84歳・女性
名古屋市瑞穂区在住
夫との2人暮らし(長男は近隣在住)
キーパーソン:夫
保険・福祉情報
後期高齢者医療保険:1割
介護保険:要介護4(1割)
福祉給付金資格者証あり
主病
認知症(進行性・重度)
訪問診療開始の経緯
2019年頃より認知症症状が進行。2022年8月にCOVID-19へ罹患し自宅療養していたが、食事・水分摂取拒否により脱水と高Na血症を発症しA医療センターへ救急搬送された。入院中も拒否が強く経鼻胃管は自己抜去され持続困難となり、家族は在宅での治療継続を希望。退院にあわせて訪問診療の依頼となり、2022年9月より介入を開始した。
介入内容と経過
介入当初は在宅点滴を継続したが、経口摂取が十分に回復せず、栄養不良と脱水リスクが継続していたため、家族と相談し胃瘻造設を実施。その後は胃瘻中心の経管栄養を行いながら徐々に経口摂取のリハビリを進め、現在は食事・イノラス・ラコールの経口摂取が可能となっている。重度認知症に伴い介護拒否や自己抜去などの行動症状があるものの、環境調整と家族指導を行いながら在宅療養を1年以上継続している。
医療処置
在宅点滴管理(導入初期)
胃瘻造設後の在宅栄養管理
膀胱留置カテーテル管理(自己抜去リスクあり)
付記情報
疾患種別:認知症・摂食障害・COVID後遺症対応
エリア:名古屋市瑞穂区
生活環境:夫介護・自宅療養継続
医療依存度:中等度(胃瘻管理あり)
支援上の課題:介護拒否・自己抜去リスク・BPSD対応
キーワード:胃瘻/栄養管理/在宅継続支援/BPSD対応/家族支援