要点サマリー
左乳がん骨転移による終末期がん患者に対し、疼痛緩和と呼吸症状への対応を中心に在宅療養を支えた事例である。モルヒネ製剤の段階的増量と在宅酸素療法を迅速に導入し、症状緩和を図りながら在宅看取りへ移行した。家族意向の調整と早期からの看取り支援体制構築が奏功し、患者の希望である「自宅で過ごすこと」を実現した点が重要である。ケアマネジャーにとっては、終末期がん患者における在宅移行と緩和ケアの実際を示唆する内容であり、多職種連携と意思決定支援の重要性を確認できる。
基本情報
年齢・性別:80歳 女性
居住エリア:名古屋市守山区
家族構成:本人・夫・長男の3人暮らし(KPは長女)
保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険(1割)
介護保険:要介護4(1割)
診断名
左乳がん(骨転移)/急性心不全/心房細動/高血圧症/高脂血症/左副腎腫瘍/上葉結節陰影
導入の背景
左乳がんに対し抗がん剤治療が行われたが病状進行を認め、骨転移による病的骨折も生じていたため緩和ケア方針となった。家族は「できる限り在宅で療養を続けたい」と希望し、疼痛管理を含む緩和目的で訪問診療が開始された。
介入内容と経過
訪問診療開始時より持続痛と突出痛が課題であり、オピオイドの漸増により疼痛コントロールを図った。フェンタニル貼付剤とレスキュー薬の増量により就眠維持と経口摂取が可能となった。その後、呼吸状態の悪化を認め在宅酸素療法を導入し、看取りに向けた準備を家族と進めた。最終的に自宅での看取り希望が明確化し、ご家族の見守りのもと自宅で逝去となった。
医療対応の詳細
・疼痛管理(フェントステープ増量、レスキュー使用調整)
・呼吸症状緩和(在宅酸素療法導入)
・緩和ケア方針の明確化と家族支援
・終末期の意思決定支援と看取り支援
支援のポイント
・疼痛コントロールは段階処方と適切な評価が鍵
・呼吸状態悪化に備えた早期酸素導入の検討
・家族とのコミュニケーションを重ね方針を共通化
・看取りを前提とした支援は早期準備が重要
考察
終末期がん患者においては、医療対応と同等に意思決定支援や家族支援が重要となる。本例は、在宅緩和ケアの基本である症状緩和・生活支援・意思決定支援をバランスよく実践できた一例であり、在宅看取りの実現には多職種協働と計画的支援が欠かせないことを示している。
付記情報
・疾患種別:悪性腫瘍(終末期)
・病名:左乳がん骨転移、急性心不全ほか
・医療処置:褥瘡処置、膀胱留置カテーテル、在宅酸素療法
・エリア:名古屋市守山区
・生活環境:家族同居、高い介護負担
・医療負担割合:1割
・専門医介入:緩和ケア方針あり
・公費負担医療:該当なし
・障害者手帳・認定情報:該当なし