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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/10/22

頚髄損傷による通院困難を背景に在宅医療へ移行した独居男性の継続支援

要点サマリー

頚椎損傷後の四肢不全麻痺を有し通院困難となった独居男性に対し、訪問診療により慢性疾患管理と生活支援を両立したケースである。急性増悪時の対応を都度実施しながら状態を安定的に維持し、本人の希望を尊重した支援方針を継続した結果、海外転居という生活目標の実現につながった。ケアマネジャーにとっては、「独居×身体障害×通院困難」でも適切な在宅支援体制構築が可能であることを示し、本人の生活希望を軸に据えた支援調整の重要性を示唆する事例である。

基本情報

年齢・性別:63歳 男性
居住エリア:名古屋市中村区
家族構成:独居、キーパーソンは知人。他県に兄、海外(フィリピン)に妻がいる。

保険・福祉情報

医療保険:国民健康保険(3割)
介護保険:要介護3(1割)
障害関連:身体障害者手帳あり、丸障あり

診断名

頚椎損傷後遺症(四肢不全麻痺)/高血圧症/脂質異常症/前立腺肥大症

導入の背景

飲酒後の転倒により頚椎損傷を受傷し四肢不全麻痺となった。リハビリ病院での加療を経て自宅復帰したが、上肢機能障害と歩行困難が残存し、外来通院の継続が困難となったため訪問診療を希望した。

介入内容と経過

訪問診療導入後は慢性疾患管理を中心に定期的な診療を継続した。ADLは杖歩行レベルで維持され、感染症や体調変化にも適宜対応することで長期的な在宅生活が可能となった。約1年半の介入後、本人の希望によりフィリピンへの帰国準備を進め、連携のうえ紹介状を作成し、海外での医療継続につなげた。

医療対応の詳細

・循環器・代謝疾患の薬物療法管理
・感染症発症時の内服調整と経過観察
・在宅での慢性期フォローと健康状態モニタリング
・海外転居に向けた医療情報整理・紹介状作成支援

支援のポイント

・独居高齢者でも近隣支援者(知人)と連携することで在宅療養が成立
・医療のみならず生活継続の意向を尊重した支援調整
・将来の生活設計(帰国)も視野に入れた支援が有効
・介護保険・障害福祉制度の併用により生活機能を維持

考察

頚髄損傷を有する独居者は生活機能低下や孤立リスクを抱えやすいが、適切な在宅フォローと福祉支援の活用により地域生活の継続は十分可能である。また、本人の生活目標を尊重し、医療と生活支援を一体で考えることが支援満足度の向上につながると考える。

付記情報

・疾患種別:神経・整形疾患
・病名:頚椎損傷後遺症、高血圧症、脂質異常症、前立腺肥大症
・医療処置:該当なし
・エリア:名古屋市中村区
・生活環境:独居、地域支援者との連携あり
・医療負担割合:3割
・専門医介入:なし
・公費負担医療:丸障
・障害者手帳・認定情報:身体障害者手帳あり